雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

北又谷 初めての五級トライ

お盆休みは、北ア黒部の黒薙川北又谷へ。

この沢は黒部一の美渓とも称されていて、隣の柳又谷と並び称される日本を代表する名渓である。

ちなみに遡行グレードは自身初となる五級なのだが、ぺーぺーの自分以外何故か最強メンツが三人が揃ってしまい、出発前から戦々恐々。

「北又谷なんか癒し系だよ~」という言葉に騙されて半信半疑で付いて行ったら、初っ端の方は滑落=溺死なシーンが続き、五級沢の洗礼を存分に浴びる形となった。

 

8/12

アプローチは急行能登を使い、富山の泊駅へ。

そこからタクシーを利用して越道峠まで移動…と思ったら運ちゃんが北又小屋まで行ってしまったので、峠まで戻ってもらう。

入山前には、少なくともこの日に三パーティは入るらしいとの情報だったが、この時点では他パーティの姿は見当たらず、運がよければ北又貸切状態になるかもしれない。

まずは軽く山越えして、沢を下って北又谷に入る。水量は平水よりやや大目らしいとのことだが、そもそもこんな水量の多い沢を遡行すること自体始めてである。

冷たい水に胸まで漬かりながら遡行を開始すると、まずは魚止めの滝が出現。みごとなU字型の切れ込みを持つ、秘境北又谷のゲートと言った趣である。釜に落ちたらタダでは済まなさそうなので、右壁をザイルでFixして通過。

 

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ここから先の遡行は、一度でもヘツリでミスって流れに呑まれようものなら、一気に下流まで押し戻されてしまうので要注意。絶対にミスは許されないとなると、微妙なヘツリでは思わず足が震えてしまう。

そして続いて現れるのは、溺死事故も起こっているという噂の、複雑怪奇な流れを持つ大釜淵。ここは一度渦に引っ張られると、永遠に戻れないエンドレスな軌跡を描き続けるので、ザイルで確保してからアタック。

 

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滝左の凹角になんとか取り付こうとして頑張っていると、平泳ぎしている足にザイルが絡まり、水中に足が引っ張られて一瞬溺れそうになる。

どざえもんの気持ちが痛いほど分かった瞬間であった…。ここは右岸から高巻いて突破。

 

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続く又右衛門滝も右壁に何度かトライしたが駄目そうだったので、恵振谷との間のリッジから取り付き高巻く。

下りはザイル50mを二本連結して、空中懸垂を交えながらロング懸垂。

 

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その後も、緊張感のあるゴルジュ突破が続き、ザイルを多用しながら慎重に進む。

この辺も流されたら一気に下流へ押し戻されるので、終始緊張感の伴う遡行だったが、厳しさの中の楽しさがなんとも心地よい。

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幕場に着いてからは、食糧を調達するため一狩りしに行く。調度、人数分の岩魚がゲットできたので、塩焼きにして美味しくいただく。

 

8/13

二日目は小雨の中の遡行。この日は白金滝、三段の滝、サルガ滝を左岸から高巻く以外は、それほど厳しい場面は無い。釣りに精を出し、岩魚の刺身などを食しながら遡行する。

 

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ちなみに、岩魚はオスよりメスの方が身が引き締まっており、コリコリして美味しいという事実が判明。でもメスは子供を生むので、できればリリースした方が良い。途中でニンゲンをなめ切っているカモシカに出合ったりしながら、引き続き竿を出して進むが、小雨が降っているためアブがよって来ず、そもそもの餌集めに難儀する。

 

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トポに泊まりたくなるような河原と言う表記があったので、この日は頑張ってそこまで進む。しかし、夕方からは雨足が強くなり、河原は増水して泥水の底に敢え無く沈。泊まりたくなるような河原は消滅してしまったので、高台にビバーク地を開拓して幕営する。

寒いわ、虫は多いわで、最高に不快な夜。でも、飯豊・朝日に比べれば虫の数はかわいいものらしい。

ドM沢屋の世界は想像を絶するほどに深い・・・いや不快らしい。

 

8/14

三日目は北又谷、最後のツメということで、すんなり終わってしまうかと思いきや、小滝が続き意外と楽しませてくれた。

最後はヤブを漕ぎ、三時間ほどで犬ヶ岳手前の栂海新道に転がりこんで、遡行終了。

予定ではこの後、金山谷下降もオプションで付いていたのだが、諸条件を考慮してカット。ということで、沢装を解除して下山開始。

 

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ここから親不知までは、泥道が随所に現れ、滑って泥だらけになりながら進む。

白鳥山を経由し、このまま親不知までだらだらと下るのかと思いきや、下山中にラッキーなイベントが発生し、坂田峠から車で下山可能に。ありがたや、ありがたや。

越中宮崎の温泉で汗を流し、帰りの服を調達。厳しい沢は軽量化の為に下界用の服を持ってこないことはザラである。

しかし、トランクス一丁でズボンに見えるから大丈夫と言い張る某ベテランの主張には、若輩者ながら疑問の意を持たざるを得なかった…。

その後、糸魚川に移動して居酒屋で打ち上げ。

最後に渾身の思いで突破したアルコールゴルジュが、今山行の真の核心。急行能登の発車時間まで、一人待合室で爆睡してしまった。

 

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[おまけ]

経験不足で色々と戸惑うこともありましたが、熟練者の皆様に支えられて非常に有意義な山行となりました。

実地でいろいろな技術を教えていただき、とても勉強になりました。

今回は完全にフォローされる側だったので、今後はもっと自立した遡行者となれるよう、精進して参りたいと思います。

そしてまた、黒部の沢に行きましょう!!