雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

爺ヶ岳主峰東面~小冷沢滑降

爺ヶ岳主峰東面~小冷沢滑降(2017/3/12)
メンバー:skialpinist氏、mafia氏、SHOさん

3/12(日)
2:50 鹿島-9:50 爺ヶ岳-12:30 滑降開始-13:30 登り返し地点-16:00 車道

なるべく早い時間に滑降したいので、早起きして3時前に鹿島の集落を出発。爺ヶ岳東尾根は最初に急登があるのでそこは板を担ぎ、主尾根に乗ったところで板を履く。
ハイシーズンなのでトレースはばっちりだが、当然スキーのトレースはない。
後立の稜線のすぐ上には巨大な満月が煌々と輝いており、闇夜でも明るい。


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ジャンクションピークの手前の急登でまた少しだけ担ぎ。ここで日の出を迎える。P3付近からは所々テントが張られており、続々とアタックに向かう登山者が出発している。
イグルーや雪洞などもあり、非常に賑やか。爺ヶ岳の山肌がモルゲンロートに染まっていく。

午前中は高曇りで幸いにも気温は上がらないが少々寒い。すでに三月だが、平日に寒気が入ってまとまった降雪もあり、雰囲気的にはまだ厳冬期。
P2手前の急登からは板を担ぎ、P1から先の滑走路の様な緩い尾根も、切り替えの手間を惜しんで全て担いだ。


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約7時間で爺ヶ岳南峰に到着。今シーズン後立の稜線は三回目だが、いつ来ても立山連峰の景色が素晴らしい。
ちなみに爺ヶ岳はほとんど山スキーで滑られることはなく、主峰イーストフェイス~小冷沢はskialpinist氏が2009年に冬期初滑降されたとのこと。
赤岩尾根の南にある西沢は比較的滑られることもあるが、爺ヶ岳北峰側からの滑降でないと爺ヶ岳から滑ったとは言いづらい。
今回は北峰付近まで往復して都度ロープを出しながら斜面の調査をしていたので、稜線付近に2時間半も滞在することとなった。


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雪庇を崩して斜面に入り、新雪の接合を確認した結果、ドロップ決定。まずはskialpinist氏から滑り始めるが、ここは雪崩が発生すると小冷沢下部まで一気に巻き込まれる様な地形で、途中にまともなリグループポイントもない。正直四人で充分なリスクマネジメントをしながら滑れる様なラインではないが、とにかく全員がなるべく止まらずにひたすら滑る。


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自分は三番目にドロップ。このイーストフェイスは爺ヶ岳東尾根を登る際に終始目に入る斜面で、一見まともに滑れるのかという印象だが、斜面上部に立つとなるほどという感じ。やや固いところもあるが、思った以上にパウが残っており、緊張する最初の滑りとしてはありがたい。
フェイスが終わるあたりからスキーヤーズ右に入り、中間部は泡雪崩で削られたワイドなルンゼを滑降する。ここは稜線からは窺い知れない領域だが、周囲を急峻な岩峰に囲まれ中々アルパインチックな雰囲気。ここは一番パウダーが溜まっており、セミファットで下手に攻めると埋まるほど。前後のメンバーを目視で確認し次第、どんどん滑っていく。


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skialpinist氏と山に行くとよくスティープ滑降は一気に滑れることが重要だと言われるが、今年のエキスパートキャンプでISAMUさんに習った滑りがまさにそれを体現するような滑り方で、さっそく実践で大活躍することとなった。
斜度が落ちる後半も以前後方からの雪崩リスクがあるのでノンストップで滑り続ける。思った以上に広い沢筋でそこにも延々とパウダーが続いており感動の一言。結果的に標高差1400mのパウダーを満喫。周囲雪崩音ゼロ、デブリ無しの最高の条件。爺ヶ岳にこんなところ素晴らしいところがあるとは!


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ラストはカモシカにも遭遇。パウダーなので逃げ足が遅く、スキーであっと言う間に追い抜く。驚いた顔でこちらを凝視する様がかわいい。

小冷沢は大谷原まで続いているが、最後は堰堤が続いており危険かつ面倒なので、途中で丸山の南にある標高1420mのコルに登り返す。あまりよい登路はないので慎重に。コルからは東側の斜面を落とすことになるが、沢に入るとはまるそうなので、標高1451mポコの東側の尾根に入る。
上部は比較的広い尾根なので快適に滑るが、下部は尾根が狭くなるので北側の沢に落とす。これで終わりかと思いきや、あと少しのところで一つだけ露出した滝に阻まれシールで登り返し。やはり標高の低いところでは安易に沢に入らない様にしなければいけない。16時に車道に到着。

ちなみに今シーズンは12月にも爺ヶ岳東尾根に行っており、その際に爺ヶ岳を滑りたいという話をしていたが、ありがたい事にすぐにその機会が訪れることとなった。今回のメンバーは自分以外、翌週にも西沢奥壁も滑られており、爺ヶ岳が熱いラストパウダーシーズンとなった。

谷川岳~赤谷川~万太郎山

ルート:谷川岳~赤谷川~万太郎山(2017/3/4-5)
メンバー:Minapoさん


3/4(土)
12:00 天神平-14:30 肩ノ小屋 ⇔ 一ノ倉岳手前


早朝東京発、18切符でのんびりと土合へ。486段の階段を駆け上がってバスに乗ろうと思ったら、無常にも目の前を通り過ぎていったので、歩いてロープウェイ乗り場へ。気温が高く、この時点ですでに汗が噴き出る。天神平では天神バンクドスラロームというスノーボードの大会が開催されており賑やか。いつも登っているラインがロープで押しやられていて取付けないので少々手間取る。


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西黒沢もハイシーズンだけあってトレースでギタギタ。ゆるゆると登り、肩ノ小屋に荷物をデポして、一ノ倉岳付近まで散歩する。


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マチガ沢本谷は三浦さん達が朝にドロップしたトレースが鮮明に刻まれていた。夜は再び肩ノ小屋に戻り就寝。


3/5(日)
6:00 肩ノ小屋-7:15 オジカ沢の頭-赤谷川-9:00 登り返し-10:50 万太郎山 11:20-14:30 毛渡橋-15:00 土樽


トマの耳で朝焼けを拝み、小屋を出発。モルゲンロートに染まる国境稜線の縦走は本当に気持ちが良い。頑張ればシールでも進めそうだが、早朝はまだ斜面が固いので板を担いで進む。


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オジカ沢の頭では眼下に雲海が広がる。まだ太陽が低いので雲海をスクリーンにブロッケン現象も拝むことができた。これから進む赤谷川も雲海に覆われているが、山頂でゆっくりしている間に徐々に雲が消え、滑り始める頃には視界もバッチリ。ただし、赤谷川は源頭から西向きに伸びているので、朝方はあまり日が当たらない。


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赤谷川の滑りだしはカリカリ、シュカブラもあり、あまり快適には滑れない。やや緊張するトラバースを経て、沢底に降り立つ。


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ここからは緩い斜面をだらだら滑るだけだが、半年前に遡行した赤谷川の源頭を冬にスキーで滑るというシチュエーションは中々素晴らしい。


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前回沢登りで幕営した沢が大きく屈曲する付近で、万太郎山の南東斜面に取りつく。下部の標高差200mは沢を詰め、残りの300mは笹薮とハイマツの樹氷で歩きづらい尾根を登る。振り返れば赤谷川の全景が拝め、絶景の一言。

この時期、ドウドウセンや裏越ノセンはどうなっているのだろうかと想像しながら、行動食のブロックベーコンを頬張る。


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万太郎山の山頂では相変わらず絶景が広がっているが、少し休憩するとガスが湧いてきて一時的に稜線直下の視界がなくなる。とても滑れる状況じゃないので、稜線直下は板を担いで下る。


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何も考えないと万太郎山の北西に延びる尾根を辿ってしまうが、これだと右手の沢に入ってしまい、狭い沢筋を滑ることになる。ここは尾根に入らず、左手の西面斜面を下るのがおススメ。西面斜面は下部に台地状地形が広がるが、この上にオープンで最高に気持ち良い斜面が広がっており、仙ノ倉を眼前に一気に滑り切るのがこの万太郎越えのハイライト。


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台地状地形から毛渡沢までもまだまだ滑りが楽しめるが、さすがにそろそろストップスノー化してくる。アンモナイトが転がり始める中、ふと目を凝らせばウサギやカモシカが駆けめぐる姿も目に入る。


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毛渡沢は沢割れに気をつかいながらの滑降で右に左に行ったり来たり。最後は先週日白山に行くために歩いた林道を再び辿るが、途中で案の定知り合いのパーティに遭遇。
何度か歩いているが、毛渡橋から土樽駅の車道も微妙に長くしんどい。土樽駅に到着したのが三時間に一本しかない電車がくる30分前でちょっと危なかった。
恵まれた天気の中、楽しいツアーを終えた充実感に浸りながら再び18切符で帰京した。


日白山~小松沢滑降

ルート:長釣尾根~日白山~小松沢滑降(2017/2/26)


2/25(土)
土曜朝に東京発、渋滞に巻き込まれながら湯沢に到着したのはお昼前。
岩原スキー場で5時間券を購入して、メンバーにBC滑降の滑り方を改めてレクチャー。
飯士山には結構な数の人が取付いている。イージースライダー滑りたし。
夜は湯沢の常連が鍋をしにくるタイプのアットホームな安宿でのんびり。


2/26(日)
7:00 毛渡橋-8:30 長釣尾根取付-11:30 日白山 12:00-13:00 出合-14:15 毛渡橋

本来の計画ではタカマタギから日白山の縦走だったが、寒冷前線の通過で稜線付近は条件が悪そうなので、長釣尾根から日白山に登るルートに変更。
まずは林道を一時間半歩き、仙ノ倉谷の出合手前で長釣尾根に取りつく。基本的にスキーで登るのにちょうどよい傾斜だが、たまに細くなったり、急になったりするので、スプリットのメンバーはややつらそう。


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3時間で日白山に到着。稜線付近は一時的に晴れて気持ちが良いが、稜線はやはりガスっているのでタカマタギからの縦走はやはり厳しかったか。


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滑降は日白山東面の小松沢だが、ピーク直下は全員が滑るのには厳しそうなので、少し戻って一番滑りやすいラインから落とすことにする。ピットチェックの結果も問題なさそうなので、満を持してドロップ。


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今回滑ったラインはそこまでオープンではないが、地形を選べば気持ちの良いツリーランを楽しめる。雪質はクリーミーパウダー。あっという間にボトムまで落とす。沢底はメローでこちらも中々良い雰囲気。


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小松沢の下部は少し割れているので、なるべく右岸沿いを滑る。スプリットは登り返しがあると手にしたストックで漕ぐことになるが、場合によっては板を抜いて歩いて登ることになるので、複雑な地形では苦労していた。


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出合からはそのまま林道を滑って一時間強で毛渡橋へ到着。足並みの揃いづらいパーティでの行動だったが、思った以上にスムーズに進めた。
打ち上げは湯沢の美味しい店…と思っていたがどこの店も激混み、帰りの関越も激混みで、まあまあ良い時間に帰京。