雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

檜枝岐パウダーキャンプ2017

今年で13回目のパウダーキャンプ、昨年から檜枝岐に場所を移して開催しているが、昨年は稀にみる貧雪によりブッシュキャンプとなってしまった。

今シーズンも二週間前までは全く雪がなかったが、二週間で一気に雪が積もり、ようやくパウダーを楽しめる状態となった。


f:id:PerseidCross:20170122111506j:plain


1/21(土)
8:00 登山口-11:50 大戸沢岳-13:40 登山口

初日はRSSAの精鋭お二人と大戸沢岳へ。昨年のパウダーキャンプでは会津駒と三岩岳に登頂したので、本企画で個人的にまだ行けていなかった大戸沢岳を目指すことに。
まずは下大戸沢沿いのトレースを辿るが、こちらは三岩沢の方に伸びているので、途中から右岸尾根へ。大戸沢岳は昨年は特に藪がひどかったとのことだが、今回はだいぶ埋まっており登りやすい。

東尾根をサクサク登って、標高1553のピークで10時の定時交信。会津駒パーティはラッセルがあったので、もう1700m以上まで上がっているらしい。
この先は細い尾根を過ぎると尾根型が薄くなり、雪崩が少し怖い地形になる。ピットチェックをすると二回とも30~40cmのあたりで新雪層内の結合の弱い部分が簡単に崩れ、ちょっと気持ち悪い感じ。他のお二人も同様の結果だったので、距離を開けて行動する。この辺からガスも出て、地形の微妙な変化が非常に分かりづらくなるのでゴーグルをつけて行動。

稜線付近でリグループして、後は大戸沢岳まで稜線歩き。とりあえずピークっぽいところを踏んで12時の定時交信を試みるが繋がらない。後で話を聞くと、この頃には会津駒パーティは下山して風呂に向かっていたらしい…。


f:id:PerseidCross:20170121131403j:plain


大戸沢岳からの滑降はやや重めの雪。地形の変化が多く、ガスの中では攻めずらい。しかし樹林帯に入ると視界も開け、上部よりも良い雪が溜まっている。美しいぶな林の中を気持ちの良いパウダーランで一気に下る。今回はアンダーな判断で東尾根の往復としたが、尾根の北側は良い斜面が広がっているので、機会をみてまた訪れたい。


f:id:PerseidCross:20170121124232j:plainphoto by Koderaさん


尾根下部はやや藪も濃いめだが問題なく滑れる。最後だけ少しクラストしていたが、総じて気持ちよく滑れた。トレースから判断するに本日は三パーティ入山していた様だが、下部の方で下大戸沢にドロップしていた。


f:id:PerseidCross:20170121134046j:plain


夜は民宿に戻り、恒例の報告会。日頃ご一緒できない皆様から貴重な話を伺えて素晴らしい時間が過ごせた。

 

1/22(日)
8:00 登山口-10:40 稜線-12:00 窓明山-14:00 登山口

二日目はハッチとSさんと窓明山へ。但し登りは他のパーティと一緒に三岩岳東尾根から。ラッセルも思ったほどではなく、ルートも知っているのであっという間に稜線へ。ここからいよいよ稜線歩きとなるが、Sさんがビンディング不調で危険な香り…。しっかり直せば問題なさそうだったので、このまま進むこととする。


f:id:PerseidCross:20170122093402j:plainphoto by Hatch


岩岳~窓明山の稜線は、樹林が濃く、その間はシュカブラがうねっており素直に進めない。仕方がないので雪庇の付け根の際をだましだまし進むが、あまりうまくない。尾根のだいぶ左手には疎林帯も見えたので、こちらを滑降して登り返した方が良かったかもしれない。しかし雪庇の下の斜面、中々美味しそう。


f:id:PerseidCross:20170122095502j:plain


コルの1700m台地は開けており開放的な雰囲気。ミチギノ沢から奥只見方面の風景も浪漫を感じさせる。再び複雑な雪面をいなしながら進んで12時に窓明山のピークに到着。予報だと昼頃から崩れるとのことだったが、三岩岳のピークにガスがかかるのみでこちらは視界もバッチリ。南会津の素晴らしい景色を満喫する。


f:id:PerseidCross:20170125080413j:plainphoto by Hatch


窓明山東尾根はピーク直下にオープンな斜面が広がっており、メロー気味だが最高に気持ち良い。尾根通しの滑降では、会津駒・大戸沢・三岩岳にはないロケーション。コルからは一旦、家向山南西ピークに向かってシールで登り返し、再び滑降。この辺から地形が複雑になりトラバースで適宜巻きながら進んでいくか、それもまた楽し。尾根上は雪の状態もよく、気持ちよくかっ飛ばす。


f:id:PerseidCross:20170125080332j:plainphoto by Hatch


標高1500m付近からはいよいよ尾根も細くなり、残り標高差300mはいなしながら下るのみ。最後50mは板を外して14時に国道に到着。全三パーティ中、このパーティが一番遅くなると思われたが、定時交信をすると一番早く下山できた様子。御大パーティはエスケープで黒檜沢のスティープなルンゼを滑降して、東尾根に登り返したらしい。
ちなみに下降は途中でスキーヤーズライトの保太橋沢に滑りたくなるが、こちらは滝も多くゴルジュ気味の地形で、沢が割れていると詰むので要注意。黒檜沢と保太橋沢は、どちらも沢登りで登られている沢である。
今回、周回する中で色々な地形を見れてイメージも湧いてきたので、機会があればパウダーキャンプ以外の企画でも檜枝岐を訪れてみたい。


遠見尾根~五龍岳&八方尾根

ルート:遠見尾根~五龍岳(2017/1/7)
4:20 駐車場-7:00 一ノ背髪-10:45 五龍山荘-12:30 五龍岳-16:20 駐車場


年始の飛騨沢に続き、再びロング日帰り山行。

今冬は赤岩尾根~鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳東尾根~爺ヶ岳中峰と、モルゲンロートを拝んで自パーティでフルラッセルしてピークに登頂というパターンが続いていたが、今回も同じ流れで五龍岳に登頂できたので、なかなか後立山と相性が良い。

ちなみに毎度ラッセル後のトレースを別パーティが辿ってくるが、一度もお礼を言われたことがないのはちょっと不思議。まあ、個人的にラッセルをしないと気分よく登頂できないという側面もあるので、ラッセルをさせてもらう権利を得たという意味ではありがたい。


f:id:PerseidCross:20170107070147j:plain

f:id:PerseidCross:20170107071022j:plain


白岳手前のカール状地形では二か所でピットチェック。事前にアルパインエリアでの不安定性に対する警告を得ていたが、懸念の1227MFcrと思われる層も40~50cm↓で他の層とほぼ馴染んでおりNoFailureだったので、そのまま最短ルートで進むこととする。

途中でウインドスラブに変わる可能性もあるので、ストックでのチェックは継続的に行いながら登る。


f:id:PerseidCross:20170107094211j:plain


五龍山荘からは板を担いで登るが、強風にあおられる。目当てのルートのチェックをしながら進むが、かなり雪が少ない。途中からルーファイが面倒になったので、正規のルートに戻って山頂を目指す。

今回は比較的雪が緩んでいたが、氷化が進んでいると滑落リスクも高いので、ロープ類やアイゼンの選択など、対策は万全を期したい。最近はアルミアイゼンが流行っている気がするが、斜面の条件が悪い場合や突然の破損リスクを考えると、こういうタイプのルートでは使いたくない。


f:id:PerseidCross:20170107113152j:plain


最低限の睡眠時間を確保する為にギリギリのタイミングでの出発となったが、引き返しリミットを13時に設定してなんとか12時半に登頂成功。

狙いのルートは雪の付きが甘く、これから別案でねばろうにもルート状況のチェックができていない。日帰りとしては有事の際にバッファを確保できない時間帯でもあるので、セオリー通り往路を戻る。


f:id:PerseidCross:20170107123058j:plain

f:id:PerseidCross:20170107134246j:plain


三連休の初日ということで、遠見尾根ではこれから登り始める登山者と多くすれ違う。それなりに楽しく滑れたが、気温が異常に高いので後半はパックパウダー。


噂によると、ゲレンデ終了後にスキー場を滑ろうとすると怒られてゴンドラで降ろされるらしいが、今回は余裕を持って営業時間内に帰ってこれた。折角なのでフォームチェックをしながら下る。

ジャスト12時間行動だったが、爺ヶ岳で吐きそうになりながら無心でラッセルした時と比べるとまあまあ楽な部類。勿論、メンバーに恵まれたからという部分も大きい。

夜はおおしも食堂で腹を満たした後、白馬の居酒屋で山談義。レジェンド級の山屋がお二人いるので、昔の貴重な話を伺うことができてエキサイティングなひと時だった。

 

翌日は午前中しかもたない予報だったので、参加メンバー一部変更で八方尾根の無名沢へ。入山者も多く、基本駄目なのはわかっていたが、思った以上にパウダーを拾えたので儲けもの。下は不安が多いので、八方尾根に登り返す

ちなみに久しぶりにお会いしたU氏は、最近書籍を出版されたり、クラウドファンディングでの研究にトライされたりと、アクティブに活動されていてとても刺激になった。渡米先でもぜひ頑張って欲しい。


f:id:PerseidCross:20170108121740j:plain


八方下部はあり得ない雪の少なさだが、今日の南岸低気圧が冬型にはまれば結構降ってくれるはず。サクッと切り上げて、高速でチェーン規制が掛かる前に都内へと戻った。

水無川北沢

ルート:水無川北沢(2016/10/15-16)
メンバー:ikeさん


先週水無川の日帰り沢を二本やったので、今週は満を持して北沢へ。本当はハッチも来る予定だったが仕事の都合で断念。シルバーウィークに八海山から中ノ岳までソロ縦走してこの辺の様子を偵察していたというikeさんと二人での山行となった。


f:id:PerseidCross:20161015114514j:plain


10/15(土)
5:40 駐車場-8:10 一つ目の高巻き 9:20-10:00 関門の滝-11:15 真沢出合二俣-12:30 北沢右俣出合二俣-14:40 河原C1


一週間ぶりの水無川流域。今週末は天気も良いという事で、他のサワヤの姿もちらほら。まずは一週間で三度目となるデトノアイソメまで、眠気覚ましのアプローチ。
滝沢出合を越えると暗峡となるが、左壁からの楽しいへつりで濡れずにパス。


f:id:PerseidCross:20161015073654j:plain


オカメノゾキ下部の荒々しい姿を楽しみながら進んでいくと、登れない滝のあるゴルジュに到着する。ここで単独の遡行者を追い抜き、左岸ルンゼからの高巻きに入る。


f:id:PerseidCross:20161015080323j:plain


例年はここに大きな雪渓がある様だが今年はさすがに消滅している。場合によっては水線沿いも進めるかと思っていたが、上から覗いてみると登れなさそうな滝が続いているので、セオリー通り御月沢をトラバースして大きく巻いていく。


f:id:PerseidCross:20161015083223j:plain


なんとなく薄いところをつないで進んでいくと降りやすそうな小沢にぶつかったので、そのまま沢底に向かって下降し、ゴルジュ帯最後の滝上を左岸の草付きからトラバースして落ち口に出れば高巻き終了。一時間ちょっとですっきりと巻けた。


f:id:PerseidCross:20161015092038j:plain


西沢出合を過ぎ、遠くに関門の滝が見えてくる辺りで、今度は前方のゴルジュを右岸巻き。こちらもなんとなく薄いところを繋いでいくと懸垂支点が設置された灌木にでるので、ロープ二本を連結して懸垂下降。全体的に踏み後明瞭でメジャー沢の雰囲気。


f:id:PerseidCross:20161015100250j:plain


そしていよいよ現れる関門の滝。簡単な登りだが、念の為1Pロープを出す。その上のくの字状滝は下部のスラブは容易。続く上部は左壁から1Pで落ち口へ。


f:id:PerseidCross:20161015100752j:plain

f:id:PerseidCross:20161015103338j:plain

f:id:PerseidCross:20161015104632j:plain


この後も釜を持った小滝が連続するので、フリクションを効かせながら進んで行くと、いよいよ二俣が見えてくる。ここでikeさんがへつりで滑ってドボンしてしまったので、着替えがてら大休止。


f:id:PerseidCross:20161015105640j:plain

f:id:PerseidCross:20161015112805j:plain

f:id:PerseidCross:20161015114023j:plain


二俣は右手に幣の滝150m、左手に120mナメ滝が広がり、今回のハイライトとも呼べる素晴らしい景色が広がる。


f:id:PerseidCross:20161015114155j:plain

f:id:PerseidCross:20161015115036j:plain

f:id:PerseidCross:20161015115631j:plain


北沢のナメ滝をフリクションを効かせながら登っていくが、連瀑はどこまでも続く。やがて直登できなくなる滝が出てくるので、左岸の藪を利用しつつ進んで行く。


f:id:PerseidCross:20161015115435j:plain

f:id:PerseidCross:20161015120257j:plain

f:id:PerseidCross:20161015121055j:plain


連瀑帯を過ぎると小ゴルジュが現れ、ここを楽しく突破するとやがて二俣に到着。ここは左俣に進路を取る。


f:id:PerseidCross:20161015123223j:plain


左俣は最初から連瀑帯なので右岸のリッジから取りつくが、何も考えずに登っているとそのまま大高巻きしそうなので、一度沢底に戻れないか探ってみるとなんとかクライムダウンで降りられそう。

連漠帯はしばらく続いており、上部に厳しそうな滝も見えているが、とりあえず近づいてみないと分からないということで、水線沿いに進むこととする。


f:id:PerseidCross:20161015130157j:plain

f:id:PerseidCross:20161015130201j:plain


ややバランシーな8m滝を一つ越えるとさらに厳しそうな10m滝が現れる。左岸巻きもできそうだったが、なんとか直登できそうだったので取付いてみる。最初がいきなり釜のへつりなのでビレイヤーが大分後方になってしまい具合がよくない。仕方がないので20mぐらい進んだところのテラスで一旦ピッチを切り、しっかり確保体制を作ったところで、核心のスラブに取りつく。

スタンスが細かく出だしが緊張したが、気合でなんとか突破してそのまま右壁を直登。通常は巻かれる連漠帯だが、いざ取付いてみると充実した滝登りが楽しめ、思いがけぬ拾いものをした気分。(但し、あまりにも必死だったので核心の滝は写真なし…)

その後も少しゴルジュが続くが、やがて河原状の地形が現れるのでここで幕営とする。夜はこの時期かなり冷え込むので、焚火を起こして暖まらないとつらい。


f:id:PerseidCross:20161016071357j:plain


10/16(日)
7:00 C1-8:25 奥の二俣-10:30 登山道-11:00 越後駒ヶ岳-14:00 駐車場

明け方は寒すぎるので中々シュラフから出られない。濡れた行動服を着るのを躊躇っていたら、出発が7時なってしまった。
開けた河原状を過ぎるとゴルジュ地形になる。最初の小滝はぬめっており、寒さで動かない身体では緊張させられる。


f:id:PerseidCross:20161016071913j:plain


その後の小滝もどんどん直登するが、同行者は濡れるのを嫌って左岸の草付きを巻いていたが、個人的にはこちらの方が高度感があって怖い。


f:id:PerseidCross:20161016072833j:plain

f:id:PerseidCross:20161016072836j:plain


両岸がどんどん聳え立ってくるが、この辺は例年雪渓が残っているらしい。今年は条件がよくここも雪渓皆無。通常は雪の下に埋まっている谷の全容が拝めるのは得した気分。


f:id:PerseidCross:20161016080632j:plain


ゴーロメインで特に難しい滝はないが、とにかく両岸の切れ込みがすさまじくて圧倒される。これらの景観は、悠久の時を経て雪に削られて作られてきたのだなと思うと感慨深い。ちなみにこのゴルジュは稜線からだと隠れて見えないので沢を遡行したものだけが見ることができる。

ちなみに真沢はスラブ滝がメインなのに対して、北沢はゴルジュが際立っており、その対比が面白い。北沢は上流部で水平方向に長く伸びているので、その地形の差が沢の形を特徴付けているのであろう。


f:id:PerseidCross:20161016080805j:plain


奥の二俣を越えるとやがて太陽が当たりだし、滝をいくつか越えると美しいナメが現れて癒しの源頭となる。


f:id:PerseidCross:20161016095057j:plain

f:id:PerseidCross:20161016100622j:plain


クボを進めばあまり藪漕ぎもなく、極楽尾根分岐近くの登山道に詰めあがる。
空身で越後駒にピストンしていると、オツルミズをのぼってきたわらじの御三方に出会う。山頂は大賑わいで、八海山や中ノ岳の展望が素晴らしい。今週の越後三山は大当たりだった様だが、そのド真ん中を遡行してきたというのは中々気分が良い。


f:id:PerseidCross:20161016110955j:plain

f:id:PerseidCross:20161016113354j:plain


紅葉と水無川エリアの景観を楽しみながら、二週間ぶりの極楽尾根を下山。泥状になっていなければ大分歩きやすい。(先週は十回ぐらい滑った)


f:id:PerseidCross:20161016120441j:plain


ちなみに下山後は二週続けて五十沢温泉へ。やけに自転車チームの車が多いなと思っていたら、どうやら東日本ロードクラシック南魚沼大会が開催されていた様で、トップ入賞のスペイン選手と期せずして相風呂となった。

ワンゲルの後輩もこのレースに参加していた様で、中々の成績を収めていたらしい。身内が頑張っているというのは励みになる。これからも頑張りたい。