雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

新緑の岩屋谷大滝

ルート:大峰 白川又川岩屋谷(2015/5/9-10)
メンバー:みなぽ


紀伊と言えばやはり大滝。
下界からのアクセスが良好なものも含めると滝マニアでもない限り行きつくせない程の大滝があるが、敢えて沢アプローチで楽しめるところを優先して廻ったところ、紀伊ビギナーとして約一年で下記の大滝に触れ合うことができた。

東ノ川:西の滝、中の滝
銚子川&往古川:光滝、清五郎滝、三平滝、岩井谷大滝、奥八町滝、八町滝
大杉谷~堂倉谷の滝群
前鬼川の滝群
立間戸谷の滝群

となると、やはり次の興味は白川又の巨瀑としてその名を馳せる岩屋谷雄滝&雌滝。
(迷滝、双門大滝辺りも外せないが…)
リハビリ中(とは言え同時期に紀伊に行き始めて既に三倍の遡行量)のみなぽ氏と共に、GW後半戦として今シーズン初の泊り沢へと出かけた。

5/9(土)
9:45 岩屋橋-12:30 45m滝-16:00 雌滝-17:00 雄滝

岩屋橋から林道を最後まで詰めて入渓。
釣り師が多いためか、入渓直後は小滝にFIXがベタ張りされていたりするが、その後は特に人工物もなく、快適な沢登り。


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へつり、泳ぎを始め、ショルダーの必要な巨岩ゴーロや、シャワーを浴びながらの滝直登など、様々な沢の要素がコンパクトにまとまっており、遡行者を飽きさせない。


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45m滝は左のルンゼから巻くが、下部がツルツルで滑りそうなので念の為ロープを出す。二俣周辺の連瀑帯も中々楽しい。


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やがて左岸に見上げるような大嵓が出現し、沢全体が威圧的な雰囲気を帯び始める。そのまま奥まで進むと、ちょっと手強そうな15m滝CSが登場。
ここはロープを出してハーケンを打ちながら直登する。


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いやらしい泥付きトラバースを経ると、眼前にシャワー状の雌滝70mが登場。
端正な姿に見惚れていると、足元にアマゴがぶつかってきたので、二匹ほど手づかみでゲット。しかし連瀑帯の途中の狭いエリアに少なくない魚影があるのが不思議。


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雌滝は右岸のルンぜから巻くが、何やら岩場のいずこから獣の呻き声の様なものが聞こえる。
最初は野犬でもいるのかな…?と思ったが、岩場に取り付くとあちこちから残響がこだましており、まるで岩全体が呻いているかの様な不思議な感覚を覚える。
よくよく考えると、変な鳴き声のカエルだろうと予測はついたのだが、あまりにも野獣めいた鳴き声だったので思わず身構えてしまった。とは言え正体は見ていないので、個人的には岩屋谷の妖怪ということにしておきたい。


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雌滝から約一時間の巻きで、いよいよ雄滝130mの直下に到着。
本日はここで幕営。雨も降り止み、ツェルトを張って幕営
さっそく焚火を起こし、先ほど捕まえたアマゴに途中で摘んだサンショウの葉っぱを腹に詰めて塩焼きにする。


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深夜、空を見上げると満点の星空。ヘッドランプをかざすと、天に伸びる巨瀑と巨木が覆い被さるように聳え、なんとも荘厳な雰囲気。

5/10(日)
9:20 雄滝-10:15 稜線-11:15 小峠山-13:00 岩屋橋

この日は帰るだけなので、朝から焚火をして四時間ほど滝を眺めながらのんびりと過ごす。上空を大鷲が優雅に舞っている。


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紀伊の大滝は一部のサワヤにとって登攀対象でもあるのだが、例にもれず、この雄滝も登られているとのこと。そっちの世界に行くことは…まあ、ないかな…。


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右岸に付けられた赤テープに導かれて稜線に出た後は、踏み跡を辿って水尻側に下山。
尾根向こうは前鬼川エリアで、昨年遡行した際に通った宿坊もはっきりと見える。主稜線方面は、釈迦ヶ岳周辺か。


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辛うじて切り開かれた踏み跡をテーピングを頼りに進み、一時間程で小峠山へ。
紀伊の山々(特に南部)は新宮周辺の山の会がリアルIngressの如くプレートを設置しているのが印象的だが、今回はFCCなる会の名前が。現地では「F○○ Climbing Club」だろうと思っていたが、正解は「Flower Card(花札)Club」らしく、運動不足解消で山に登られているとの事。中々味わい深い。


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いずれにせよ、地元の会の方が荒廃した登山道を整備してくださっているのは大変ありがたいことなので、感謝である。


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ちなみに四~五月は沢をやるには早すぎるというイメージがあるかもしれないが、紀伊の沢はすでに水温もそこまで冷たくなく、ブヨ・蚊・ヒルなどの害虫もでないので、秋と並んで遡行に最も適したシーズンである様に思う。


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残雪の山々に映える新緑の美しさも大好きだが、この時期の紀伊の沢も新緑が眩しくて中々魅力的なので、山スキー沢登りのスイッチングが益々悩ましくなる一方である。