雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

正沢川 細尾沢

ルート:正沢川 細尾沢(2017/7/22-23)


夏合宿のプレの悪天転進で中アの初級沢へ。普通に遡行すると何でもない沢ですが、細尾大滝の登攀が良いアクセントになりました。但しとっても脆いので、賢明な方はセオリー通り巻きましょう。


7/22(土)
7:35 駐車場-9:35 細尾沢出合-10:55 大滝 13:00-14:00 C1


木曽駒高原スキー場の登山口に車を止めて入山。登山道をしばし歩いて急登に差し掛かる手前の渡渉地点から入渓する。
渓相はゴーロ主体でどちらかというと沢歩き。細尾沢出合までは二時間のアプローチ言っても差し支えない。


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途中で真新しい足跡と共に黒い動物の姿が見えたので一瞬ドキッとさせられたが、岩屋でくつろぐカモシカだった。一分ほどお互いを見つめあってから分かれる。


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正沢川本谷を左に見送って細尾沢に入ると、登って楽しい小滝が現れる様になる。雪渓がでてきたと思ったら奥に40m細尾沢大滝の姿。巻く一択の滝なので高巻こうとするが、Nさんがちょっと登ってみるとのことなので正気かなと思いながらロープを出す。


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滝の下半分はそれほど難しくないのでサクサク登っていくが、突破できそうにない落ち口の少し下で水飛沫を浴びながらくの字型に曲がって右上し始めたタイミングで動きが止まる。落石がひっきりなしに落ちてきて非常に脆そう。どうやら岩が安定しているか不明なので、入念にチェックしながら登っているらしい。
下手すると落石でロープが切れかねないし、支点もプアそうなので結構ヤバい。ジリジリ進んで上部の細い立ち木にランニングを取りようやくひと心地だが、その後も手こずるトラバースがある様で中々大変そうだった。


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ロープがFIXされて二番手はKくんが登るが相変わらず落石がひどい。自分はラストで大滝に取りつくと思った以上に岩が尖っており痛い。素手だったので軽く流血。先行二人が苦戦していた右上ポイントは山側の岩がヌメヌメでホールドも一切なく、谷側の飛び出した岩に足をのせて回り込む必要があるが、この岩がまたボロッと根元から崩れ落ちそうで怖い。恐る恐る足をのせて回り込み、ようやく上部のブッシュを掴む。その後のトラバースを慎重にこなし、ようやく終了点へ。
大滝を登ったという充実感はあるが、正直脆すぎてヤバかった…。


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滝上からは細尾沢のハイライトともいうべき美しいナメ滝が連続する。一時間ほど歩くと雪渓の横に幕場適地があったので、本日はここまでとする。


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さっそく焚火の準備をするが、いざ着火しようというタイミングで雨が降り出し、テントに避難。意気消沈してご飯の準備をしていると、雨がやんで急に天気が回復してきたので、薪に着火する。上等なお酒に厚切りベーコンをはじめとした豪華なおつまみの数々で、充実の焚火ライフ。


7/23(日)
5:10 C1-7:35 木曽駒ヶ岳山頂-10:00 七合目避難小屋-11:30 駐車場


夜半に一時的に強く雨が降り、朝起きると隣の雪渓が崩壊していた。昨日よりも天気が悪く、稜線付近はガスガス。標高が高くて寒いので、朝焚火で身体を温めてから行動開始。
本日も雪渓なども交えながら楽しい滝登りだが、一時間ほど歩くとツメの様相。どんどん直登していくと、一時的な藪漕ぎを経て、ガレ主体の山肌登りとなる。


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右側の稜線にでるのが一番安全な様だが、そのまま行けそうなのでガレ斜面を直上して尾根筋へ。そのままガスの中を登って行くと登山道に出て、一分ほどで大勢の登山客でにぎわう木曽駒山頂に到着。先週の赤石沢北沢~赤石岳に引き続き、沢からアルプスの主峰登頂シリーズだったが、先週と同じく視界ゼロ…。
寒いので記念写真を撮ってすぐに下山開始。

福島Bコースは避難小屋までのトラバースが長いが、そこから先の下りは早い。山頂から三時間半ほどの行動で登山口に到着。麓の国民宿舎で汗を流して帰京した。


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赤石沢北沢

ルート:赤石沢北沢(2017/7/15-17)
メンバー:MK氏、ハッチ


7/15(土)
11:40 赤石沢入渓点-15:30 取水堰堤-16:00 北沢出合C1


7時前に畑薙に到着したがすでに長蛇の列で、椹島行きのバスはまさかの三巡目。
三時間以上、駐車場でだらだらと過ごす。ようやくバスに乗り込んだと思いきや、混雑により途中下車はNGとのことで一旦椹島まで行き、赤石沢入渓点まで歩いて戻る。結局入渓したのは12時ちょっと前。


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赤石沢は取水していないとのことなので、以前来た時より水量が多い。前回は水線を突破した淵も巻きが必要だったりと多少時間がかかる。しかし、これが本来の赤石沢の水量であり、これぐらい手応えがある方が遡行しがいがある。


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14時頃に先行パーティに出会い、さらにその少し先で下降してきた釣り師パーティに出会う。三連休だけあって、入渓者も多い。取水堰堤を過ぎるとすぐに北沢出合。ここに幕場適地があるので、本日は短いが行動終了。ボリュームたっぷりの牛丼で明日の長時間行動に備える。


7/16(日)
4:50 C1-14:50 登山道-16:20 赤石岳避難小屋 C2


赤石沢の南沢(本流)は中々標高が上がらないが、北沢はどんどん標高を上げていく。最初は巨岩のゴーロ帯で特に難しいところはない。やがて前方に二段二条の滝が現れ、本格的な沢登りが始まる。


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この滝の上段はややハング気味だが、なんとか登れそうなので取りついてみる。ハーケンを効かせてハング部分を乗り越えると後はスムーズに滝上まで抜けられる。


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この後のスラブ滝は左手からトラバース気味に越え、続く小滝群も快適に登って行く。
滝が左手に曲がるところで、2段20mほどの滝が出てくるので一度取付いてみるが、岩が脆くて危険なので引き返す。左岸の草付きから巻きに入ると獣道で滝の上部に抜けられる。


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続く直瀑もなんとか抜けられそうに見えるが、最後が水流が強くて難しいので、また出戻って右岸から巻く。


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この先にいよいよ40m大滝を始まりとするゴルジュ帯が出現する。ここは全く手が付けられないので、左岸のルンゼから巻きに入る。


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再び沢底に戻るといよいよ雪渓が現れる。この雪渓は滝の落ち口で途切れており、その先は屈曲したゴルジュ状地形で伺いしれない。先に進めるか分からないが、雪渓から飛び降りて滝の左手のスラブ帯に取りつく。


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滝は登れず、側壁はズルズル系なので中々手強い。大きく巻き上げらながらもなんとかトラバースラインがつながる。


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その先を覗いてみるとまだまだ滝は続いているが、登れそうな滝だったので一安心。ここでダメなら雪渓まで戻って高巻きのやり直しとなるので、二時間以上のロスが発生するところだった。


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滝の右壁をハーケンを効かして快適に登り、続く小滝をフリーで直登すると、最後に再び登れない滝。ここは右手のルンゼをロープをだして登るが、またしてもズルズル系でいやらしい。


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巻き上がると獣道があるのでそのまま進んでいく。手強かったゴルジュ帯は抜けられたが、今度は行く手に大きな雪渓が広がっている。


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雪渓はひたすら歩くだけだが、ピンソールや軽アイゼンなどの装備を用意していなかったので滑る。一度ゴルジュ帯で雪渓が切れるので左岸から巻き、再び長大な雪渓歩き。滑って消耗するので、後半は雪と土のボーダーラインを選んで登る。


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雪渓は赤石岳の山頂まで繋がっているが、最後は急登且ついつ崩落するか分からない薄い雪渓なので、登山道側に抜けて行動終了。


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ちょうどこのタイミングで雨が降ってきてどうするか悩んだが、折角なので赤石岳山頂を目指すことにする。一時間半程度のハイクアップで赤石岳避難小屋へ。赤石岳の稜線は強風でかなり消耗させられたが、小屋に入って一安心。

避難小屋にはフレンドリーな山屋が多く、ただ座っているだけで美味しそうなご飯を色々頂いてしまった。小屋の管理人さんは名物主人らしく、喋りも面白い。赤石沢北沢なんて面白くないと言うのに引っかかったが、遡行したことはないらしい…。


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7/17(月)
5:20 C2-8:40 椹島


この日も朝からガス&強風。九時頃には晴れるらしいが、残念ながらそこまで待つ余裕はない。再び展望ゼロの赤石岳に登頂し、後はひたすら下るのみ。約三時間程度の行動で椹島に到着すると、案の定快晴。赤石の山頂では絶景が広がっているに違いない。
バスの待ち時間を利用してシャワーを浴び、お昼前に駐車場に到着。長い林道をひた走って昨年と同様、さわやかで打ち上げ。帰りの高速はひどい渋滞だったので、御殿場から道志道経由で圏央道に入り、結局夕方近くに帰京した。


<まとめ>
赤石沢の本流は言うまでもなくクラシックな名ルートだが、北沢は山岳会的な人種が好むルートで、本流よりも沢登りをやった感は強い。今回は情報もほとんど仕入れない状態で行ったが、中盤のゴルジュ帯は突っ込んでみないと抜けられるのか分からず、結局ギリギリのところで抜けられるという展開で、沢登りの駆け引きが存分に楽しめた。やはり記録に頼らず、頭を使って色々と駆け引きをやって登る山が一番面白い。

GW知床スキーツアー③

5/5 海別岳
10:45 駐車地-15:00 ニセピーク-15:30 海別岳-18:00 駐車地


この日も天気が良いので羅臼から移動して海別岳を目指す。海別岳は標高1419mで、知床連山の基部に当たる。整備された登山道はなく、山スキーで登られるのが一般的らしい。朝に所用で標津町に立ち寄ったので、十二川沿いの駐車地から出発したのは11時前という、山を登るものとしてあるまじきスタートとなったが、ピストンなのでご容赦願いたい。


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トポだと最初は林道を進むことになっているが、いきなり沢の橋が無くなっており、ずぶ濡れの渡渉を強いられる。その後の林道も藪々でイメージと違う。こんな調子で山頂まで行けるのかと不安になったが、主尾根の取り付きからはしっかり雪もあり、順調にシール登行で登っていける。単調な尾根なので、後は黙々と登るのみ。


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稜線直下はハイマツが広がっているが、尾根の左側からうまく巻いていける。ニセピーク直下でスキーをデポしてここから歩きで稜線へ。ニセピークから海別岳も微妙に遠く、シールで頑張って登ってきた方が楽だったかもしれない。


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午前中は快晴だったものの、午後から天気が崩れて、海別岳に登頂した頃にはすっかり曇り空になってしまった。しかし他の知床の山と同様、山頂からの展望は素晴らしい。北面・東面にはそれぞれ海が広がり、その間に道東の山並みが遠くまで続いている。知床縦走をやるなら、本来ここから始めるべきではと思っていたが、遠音別岳との間の落ち込みが結構激しく、標高が低い部分の藪を考慮すると、中々大変そうではある。


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単調な地形なので、下山は滑降であっという間。林道は最後で渡渉を嫌い、藪を突っ切って駐車地を目指したが、最後に柵が出てきて難儀したので、やはり渡渉すべきだった。この日も前日に洗ったばかりのズボンとブーツがドロドロに。この数日間で、GWの知床登山は高い峠から登らないと渡渉&藪漕ぎがもれなくついてくるという事を思い知らされた。


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ちなみに海別岳の入山地には「天に続く道」と呼ばれる道路があるが、下山後の黄昏時にふいにその光景を目の当たりにしてなんとも言えない充実感に満たされた。


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5/6 斜里岳
7:45 根北峠-11:40 稜線-12:35 斜里岳-14:10 根北峠


GW山行の最後のターゲットは斜里岳。今まで何度か移動で通過した根北峠から出発する。山スキー百山には東斜里岳を経由する尾根からの登頂が紹介されているが、藪の状態を見てその選択肢はないなと思い、その尾根のクライマーズ左の沢筋から登っていく。GWを通して入山者が多かったようで、トレースの数も多い。沢へ入るためのトラバースがポイントとなるが、その後はひたすら沢筋を詰めていくだけなのでとても分かりやすい。翌日、再びお会いした管さんに聞くと、この時期は毎月登っているほどのメジャールートらしい。


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標高1376mの稜線鞍部に到着してからは山頂までの進み方をどうするか悩むが、一旦沢筋に落として夏道登山道沿いに登り返すと、急な尾根歩きをパスしてスムーズに進める。山頂の手前は途中で細尾根になるが、この日は強風であおられて危険なのでスキーをデポ。最後は吹き飛ばされそうな強風の中、這いながらピークに立つ。相変わらず素晴らしい景色だが、飛ばされたらかなわないので、早々に退散。先ほどのコルには後続の山スキーヤー三人組の姿があったが、この風で難儀する我々を見てか撤退していった。復路も同様に一旦沢を落としてから、1376mのコルに登り返す。


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この日も海別岳に続き、快適な滑降で下山。赤テープに従って登りで沢に入った地点よりもだいぶ上から尾根に取り付くと、シールなしで台地に戻ることができた。後は緩斜面をだらだら下って根北峠へ。下山後に斜里岳の山頂を見上げると、もの凄い速さで雲が流れており、ギリギリの登頂タイミングだった様子。


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この日は北見に宿を取ったので、GWを通して満喫させてもらった知床を離れることとなったが、最後に清里の温泉から見た斜里岳や海別岳の姿が美しく、改めて素晴らしい場所だなと感じさせられた。


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5/7 移動日
北見周辺を散策した後、女満別空港から帰京。留辺蘂町山の水族館がかなり個性的で面白かった。
帰省から戻られた管さんからも色々と情報を伺い、よいGWの最終日となった。今度はぜひ三月の流氷に囲まれた知床を訪れてみたい。