雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

白川又川本谷 奥剣又谷

ルート:大峰 白川又川本谷 奥剣又谷(2016/8/20-21)
メンバー:Minapoさん


お盆は会の夏合宿に参加するつもりだったのだが、先月転職した会社が夏季休暇がないとのことで泣く泣く断念。皆が快晴の元、会心の山行を展開している中、下界で資格勉強に励むというアレな日々。せめてもの夏を感じにと、お盆の翌週に一泊二日で大峰の白川又川本谷へ。


8/20(土)
10:00 行者環トンネル西口-水晶谷・火吹谷中間尾根-13:40 白川又川(火吹谷出合)-16:15 水晶谷出合-17:50 口剣又谷出合上C1

夜行バスで関西入りして紀伊半島へ。行者環トンネルは今回初めてだったが、登山客の車でごったがえしており想像以上に賑やか。駐車場の利用は一日あたり1000円。

まずはここから400mアップして稜線に出て、そこから白川又川に900mダウンする。水晶谷と火吹谷の中間尾根は疎林で踏み跡らしきものも随所に見られるが、いくつか枝尾根が派生しているのでルーファイは慎重に。途中で水が切れてしまったので暑さにうなだれながら下り、出発から約三時間半で火吹谷の下部に降り立つ。


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ここで沢装備になって入渓するが、苔もヌメりもないのに異様にラバーソールが滑る。おそらく岩の表面が密なのであろう。また水温も盛夏とは思えない程に冷たく、いきなり震える。白川又川に出てからも同様で、所々泳ぎが必要になるが、その度に下半身が寒さで痺れてくる。しかし前鬼ブルーと同じよう美しい水の色は感動的。

パートナーはカエルを見つける度に絶叫しており、中々テンション高い。間違ってカエルを掴んで悶絶していたのが今回のハイライト。


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やがて、左岸から滝が降り注ぐゴルジュに突入するが、眼前に巨大な赤壁が聳え立つ。まるで赤鬼が立ち塞がっているかの様な現実離れした景観。オージービーフとか言ってはいけない。


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このゴルジュはアトラクション要素が多く、白川又川でも特に面白いところ。やがて斜滝7×12mが現れるので、泳いで取りつき右壁を快適に登攀。


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この辺から水温がぬるくなり、水の色もやや緑掛かった感じになる。下部の水の冷たさは湧き水が出ているかららしい。

こうなったら占めたもので、通常は巻く淵も小滝も全て水線突破。長淵40mのどん詰まりにある小滝はシャワークライミングになるが、ぬるいシャワーを浴びている感じで気持ち良い。次の斜滝5mはかなり被っていてパッと見では登れる感じがしないが、シュリンゲアブミからのバックアンドフットで突破できた。


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水晶谷出合の先は直瀑20m滝が掛かっているので、ズルズルの右岸巻き。崩壊しかけている箇所は念の為ロープを出したが、巻きルートは明瞭で15分程度で巻けた。口剣又谷出合の25m直瀑も右岸から巻くが、こちらはもっと楽。本日はこの辺で幕営


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8/21(日)
7:20 C1-8:10 二俣-11:40 八経ヶ岳 12:20-12:50 弥山-14:50 行者環トンネル西口

早朝から雨なので、岩陰で焚火をしてうだうだ過ごす。雨が一旦止んだタイミングで重い腰を上げて出発。
二俣まではやや凡庸で、白川又川の面白いところは水晶谷出合までだったかなと思いきや、右俣に入ってからは途端に登れる滝が連続して現れて楽しませてくれる。ここからは標高差1000mをひたすら登るのみ。


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途中で先行している黒い影が見えたので、一瞬熊かなと思ったが先行する遡行者だった。話を聞くと一昨日にフジノトコから入って今日で三日目らしい。本当は昨日抜ける予定だったが、水も冷たく思いの他大変だったとのこと。この方は単独行ということで、滝場で巻きに入っていった後、稜線で再び出会うまでは姿は見えなかった。

比較的立った15m滝は、ロープを出してハーケンを決めながら登る。続くナメ滝30mは上部が少しいやらしく、2/3をフリーで登って最後だけ念の為ロープを出した。この辺の滝は関西起点沢登りルート100の記載と合致している気がしない。

ここからひたすら階段状のナメ滝を登り、次の二俣へ。一見すると左俣が本流筋だが、上部でかなり等高線が詰まっているので、トポ通り右俣に入る。15m滝を左岸から巻いてなおも小滝を登り続けると、やがてガレ地形に入り水も途切れる。そのまま沢型を詰めると、八経ヶ岳の北側の稜線に飛び出した。


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稜線に近づいた頃からずっとガスの中で、山頂での展望も特に期待していなかったが、ちょうど八経ヶ岳の山頂に到着した時点でガスが取れ始め、約20分で完璧な展望が眼前に広がった。お盆がつぶれた分の運が回ってきたのだろうか。山頂は子連れハイキングやトレランファミリーなど賑やか。単独行の方も無事に稜線まで辿り付かれた様だ。


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下山は弥山を経由して行者環トンネルまで二時間ちょっと。下山後は水遊び客の路駐でひどいことになっているミタライ渓谷を通過して、少しだけ吉野観光(金峯山寺)。アフターまで充実した週末だった。


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ちなみに下山後、大峰に沢登りに行って帰ってこない単独行者がいるというニュースを見つけたが、入山日程と言い、所属山岳会と言い、十中八九さっき沢中でお会いした方だった。警察に通報したら自動的にそうなるであろうとは言え、一日下山遅れしただけで、全国ニュースに実名、年齢、住所、職業などの個人情報が晒されるというのは堪えるものがある。

最近、会の救助要請の仕組みについて議論があったばかりなので、改めて考えさせられるケースであった。


釜川左俣

ルート:釜川左俣(2016/7/30-31)
メンバー:御大、ハッチ、SHOさん


先月のホラ貝ゴルジュ~東のナメ沢に続き、今シーズン御大と二回目の沢山行。釜川の右俣はよく行っていますが、左俣ははじめてでした。

最初から増水気味で、初日は雷雨の急襲もありましたが、天気を読んで安全に楽しく遡行できました。

登りがいのある滝が多く、訓練系の山行にはよい沢です。


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栗代川~大無間山

ルート:栗代川~大無間山~風不入~接阻峡温泉(2016/7/16-18)
メンバー:MKさん、Minapoさん

7/16(土)
12:10 栗代橋-15:10 取水堰堤

三日間の行程ではあるが、諸所の事情で当日朝に東京発。寸又峡手前の栗代橋で準備をして入渓したのは正午過ぎ。
初日の行動は寝不足に悩まされるのが常ではあるが、今回はメンバー三人中、二人が風邪気味ということで不安が多い。
とは言え序盤はほとんどがゴーロ歩き。時折、深南部らしい豪快な崩壊地を通り過ぎる。壊れた堰堤を過ぎて、取水堰堤に到着したのは15時過ぎ。


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ほとんど行動していないが、これからゴルジュ地帯だし、空模様は怪しいし、メンバーは調子悪そうだしでサクッと行動終了。明日以降の行程が思いやられるが、左岸の林道からエスケープもできるので安全面での心配は少ない。


7/17(日)
5:30 C1-ほおじろ沢出合-11:30 こっぱ沢出合-13:30 倉沢橋-15:00 C2

3時半起床、5時半出発。一発目のゴルジュ帯となる八丁暗見は中々雰囲気がある。泳ぎが必要なポイントもあり、ライジャケが活躍。鶴ノ天は頭上のせり出した巨岩が印象的。釜を泳いで左壁のチムニーを登る。


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ほおじろ沢を過ぎると一ヵ所左岸を残置ロープで登って降りるポイントがある。そこからいよいよ栗代川の核心部。龍言淵らしき滝を左壁から登り、二条2m滝を中間部の岩をショルダーで這い上がる。
核心部の龍神ノ瀬戸は想像していたよりも側壁が高く圧倒的な雰囲気。遡行自体は難しくないが、轟く激流の中、ゴルジュ内の景観を眺めているだけで心が躍る。


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洗濯機の釜の手前は登れない小滝があるので左岸からへつる。この後、反転流うずまく激流を渡渉するのが難しいとのことで、ロープをつけてトライ。発射台に近づくと水流になぐられて一気に押し流され、そのまま釜をぐるぐる流れる感じになる。流されていると楽しくなってくるが、白泡にまみれるのでライジャケがないとちょっと怖いかもしれない。ここは結局、渡渉しなくても発射台をまたいで対岸に渡れた。


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左岸から落ちる見事な直瀑を眺めた後、最後の小滝を泳いで直登するとこっぱ沢出合となり核心部が終了する。ここで長めのランチタイム。中々楽しかったが、体調不良のメンバーは冷えた為か疲労の色が濃い。
ここから倉沢橋まではまた歩き主体。三俣手前の広河原は鹿の楽園になっている様で、十匹ぐらいの鹿に遭遇した。この辺から体調不良メンバーのペースがかなり落ちてきたので、のんびりと進んでいく。
倉沢橋は右岸側が崩壊して斜めに崩落している。こんなところまで開発を推し進めた先人達の凄さと、人工物を容赦なく打ち壊していく自然の力のせめぎ合いの縮図の様でもあり、深南部らしい景色ではある。


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ここから林道で帰る人も多いようだが、今回はこのまま遡行を続けて大無間山を目指す。5m滝を左岸から巻き、その後の二俣を左に折れる。ここから滝場も出てくるが通常の沢登りの範疇で、大きく問題となるようなところはない。三つ目の20m滝を左壁から直登すると地形が落ち着いてきたので行動終了とする。後半ゆっくり進んではいたが、充実の12時間行動。明日の行程も長いので、すぐに夕食を作って就寝。


7/18(月)
4:40 C2-稜線-大無間山-風不入-尾盛駅-15:30 接阻峡温泉

3時起床、4時半出発。早々に水涸れするので水を汲んで、沢型を詰め上げていく。最後は開けた源頭を歩いて、風の吹き抜ける爽やかな稜線へ。振り返ると半年前に登った黒法師山の姿も見える。


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ここから40分ほど稜線を歩いて、大無間山の山頂へ。百名谷から深南部の盟主に登頂という行程は浪漫があって良い。景色はないがスペースが広くて開放的。下山は色々なルートが考えられるが、どれもそれなりに時間がかかり大変。今回は大無間山南嶺を辿って、風不入経由で尾盛駅を目指すこととする。


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一応バリエーションルートではあるが、藪も思ったより薄く、それなりに歩かれている印象。風不入は名前も見た目もカッコいいが、残念ながら山頂は視界なし。途中から体調不良のメンバーの行動力が落ちて本日もゆっくりとした行動。具合悪いのにこんなルートにつき合わせてしまいすみません…。


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最後は尾盛駅に向かって東側の斜面を下ったが、二年前から崩土の為、接阻峡温泉~井川は運行中止となっており、結局接阻峡温泉まで歩く羽目に。尾盛駅から鉄道に乗れないんだったら、もう少し南下して西側に下り、栗代林道経由で下山してもよかったかも。

下山後は時間を優先してタクシーで栗代橋に戻り、寸又峡温泉で汗を流して帰路につく。同じ会の赤石沢パーティも無事に完遂できたとのことで、この三連休は南ア南部で正解だった様だ。

栗代川は歩きが多くやや単調なきらいはあるが、核心部のゴルジュの雰囲気は見事だし、大無間山~風不入の縦走と組み合わせることで深南部の雄大なスケール感を満喫できる山旅となる。苦渋の末の転進先だったが、訪れて良かった。


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