雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

悠久の八久和川

ルート:朝日連峰 八久和川~出谷川中俣沢(2015/9/19-23)
メンバー:MKさん、みなぽ

 

9/19(土) 雨
12:15 泡滝ダム-皿淵沢トガラ沢-15:00 稜線-横沢下降-17:30 八久和川出合手前C1

メンバーのピックアップの関係で、泡滝ダム出発はお昼過ぎ。雨で先が思いやられるが、本日は支流を繋いで八久和川にアプローチするだけなので、増水の心配は少ない。泡滝ダムから林道を戻って皿淵沢トガラ沢に入渓、次々と現れる小滝を直登。上部は沢型を辿って行けば藪漕ぎもなく稜線に到着する。稜線のコルは池塘になっているので、これを左の藪から巻いて横沢の下降開始。横沢は小滝が連続するが、通常懸垂下降をする様な高さの滝でも不思議とクライムダウンできてしまう。


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結局、懸垂下降一回で八久和川出合手前まで下降。
八久和川出合周辺はゴルジュ地形なので、出合より手前の適当な河原で幕営。雨で焚火もできないので、初日から泣く泣く寒い夜を過ごす。


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9/20(日) 雨のち晴
6:10 C1-6:30 八久和川出合-10:30カクネ小屋跡C2(減水待ち停滞)

本日も雨の中、行動開始。本流に降り立ってみると、やはり笹濁りで水量もかなり多い。本流沿いの遡行は厳しそうなので、ロープを使って右岸に渡渉して、少し登ったところにある段丘地形に入り、上流へと続く踏み跡へ合流する。
踏み跡は一度ベンノウ沢手前で沢底に降りるが、本流は増水しておりあまり進む気になれない。右岸にあるはずの踏み跡を探して再び藪に入るが、それらしきものはない。止むを得ず薮中をトラバースするが、幾度となく小さなルンゼに阻まれ斜面を上下する事数回、ようやくピンクテープを発見。しかし、テープ発見後もいきなり踏み跡が消えたりして遅々として進まないので、後半はなるべく沢沿いを進むこととする。最後はそれなりに明瞭な踏み跡になるが、斜面に無理やり付けられている為、結構滑りやすい。
ようやく到着したカクネ沢小屋跡でしばし休憩した後、話し合って減水待ち停滞とすることに。お昼頃には雨も止み、念願の晴れ間が覗き出す。午後はぶなの巨木に囲まれた素敵な空間の中、まったりと森林浴&焚火。フィトンチッドと焚火の遠赤をたっぷり浴びながら、ご飯を炊いてランチタイム。折角八久和まで来ているので、こういう贅沢な時間の使い方も悪くない。


9/21(月) 晴
5:45 C2-9:45 茶畑沢出合-12:10 平七沢出合-13:20 登山道下降点-14:50 コマス滝上C3

4時起床だったが、一人で1時半ぐらいから焚火。本流の水量もそれなりに減った様なので、停滞分の遅れを取り戻すべく、気合を入れて出発する。適当な小沢から本流に降り立ち、歩きやすい河原状地形を進んでいく。


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芝倉沢出合から先は水量も強く、ロープ渡渉、スクラム渡渉、巻きなどを駆使して激流を越えて行く。パーティの力を合わせて激流を突破して行く感じが小気味よい。
出発から4時間で立派な滝のかかる茶畑沢出合に到着。ゴルジュ帯は豪快な流れだが、ヘツリで突破できる。激流と戯れながら進むと、やがて自然プールと呼ばれるポイントに到着。深い緑を湛えた淵は、まるで八久和の宝石の様。


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右手の岩場から越そうとするが、奥に流れの強そうな小滝が控えているのが見える。
平水なら突破も可能な様だが、今回は敬遠して左岸から高巻き、懸垂下降で沢床に戻る。


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これで核心を突破したのか、さしもの八久和も徐々に癒し渓の様相を呈し始め、美しい流れの中、多幸感に包まれながら進んでいく。平七沢出合の幕営適地を横目に、さらに前進


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登山道合流地点には釣り師の大所帯がベースを構えていたので、しばし談笑。時間も早いのでもう少し先に進んでおく。オツボ沢出合からは左岸の高巻きに入るが、釣り師もよく入渓している為か踏み跡が明瞭。続くコマス滝を右岸の踏み跡から巻くと、素晴らしい幕営適地があったので、本日はここで幕営


9/22(火) 晴
6:30 C3-6:55 呂滝-8:30 西俣沢出合-13:15 連瀑帯手前右俣出合-15:15 狐穴小屋C4

本日も快晴、呂滝に到着すると尺岩魚が三匹、足元をかすめて行った。右から泳いで突破できそうだが、朝一で泳ぎたくないので左から巻く。


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この辺から稜線も見え出し、気持ちの良い沢歩き。ポットホールの点在する赤茶けた沢床を抜け、約二時間で西俣沢との二俣に到着。これを左に進み、続く東俣沢との二俣を右に入ると、いよいよ中俣沢の遡行となる。ここからはゆるいゴルジュ地形の中、小滝を登ったり、淵を泳いだりしながら進んでいく。


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陽光でエメラルドグリーンの水面が輝き、まるで上越の沢の様な明るさ。
15m滝はロープを出して左壁を直登。その後も同様の渓相が続くが、泳ぎ過ぎて身体が冷えてきたので、7m2段の滝は左岸の藪から巻く。


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核心ゴルジュの入口にある6m滝は、ロープを出して右壁から直登。その先は一段と険しいゴルジュになっており、容易に突破させてくれなさそうな雰囲気。沢床に降りずにそのまま左岸上部のブッシュ帯を目指してスラブを直登。登ったところは段丘地形になっており歩きやすい。少し藪を置いて斜め懸垂でゴルジュ出口の10m滝の落ち口に降り立つ。この先に小さな雪渓が残っていたが、ブリッジになっている訳ではないので問題なし。上部連瀑帯が見えたところで大休止。


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二俣から先の連瀑帯は遠目から見た以上に困難さはなく、下部は直登、中部は右巻き、上部は左巻きで越える。さらに10m滝を右岸から巻くと、ようやく源頭の雰囲気。名残を惜しむ様に源頭のナメを詰め、藪漕ぎもなく狐穴小屋に到着。皆で固い握手をして完登を喜び合った。


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ちなみに狐穴小屋のある三方境は、出谷川(八久和川)中俣沢、竹ノ沢中俣沢、見附川高松沢の源頭に当たる。さらには岩井又沢ガッコ沢の源頭も近くにあり、沢ヤにとってのパワースポット的な場所である。


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9/23(水) 晴
5:45 C4-7:30 以東岳-10:15 大鳥小屋-12:30 泡滝ダム

最終日は登山道での下山のみ。引き続き天気がよく、絶景の中、稜線漫歩。
左手に三面川、右手に八久和川の源頭という贅沢な稜線を辿って以東岳へ。


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以東岳の山頂からは鳥海山と月山の展望が楽しめる。以東小屋は解体中とのことで、昨日から何度もヘリが飛び交っている。
大鳥池を過ぎ、最後は先月の東大鳥川西ノ俣沢からの下山でも歩いた登山道を経て、昼過ぎに泡滝ダム到着。
五日間もの沢旅であったが、終わってしまえばあっという間であった。

下山後の打ち上げは鼠ヶ関の鮨屋で特大海鮮丼。
最後は笹川流れで夕日を眺めてから帰京した。


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八久和川~出谷川中俣沢は言わずとしれたメジャールート。中流部へ降り立つ登山道により、釣り師の往来も多いが、そういった点を差し引いても、下流部~中流部の激しくも美しい流れ、上流部の明るい連瀑帯など、沢旅としての完成度が高く、やはり一度は訪れるべき日本を代表する沢の一つであると感じた。

朝日連峰の四~五級沢はこれで6本目だが、どれも本当に思い出深く、ますます朝日への想いが深まることとなった。