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雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

銚子川 お盆の地獄めぐり

ルート:台高 銚子川岩井谷~往古川真砂谷下降(2014/08/14-16)
メンバー:みなぽ

 

台高エリアの沢は半年間で白崩沢下降~東ノ川、光谷右俣~不動谷下降、堂倉谷本谷と続けて遡行してきたので、お盆はその区切りとして台高随一の谷と呼ばれ、地元の人には位牌谷とも呼ばれて恐れられている銚子川岩井谷に挑戦。

この沢はすんなり下降する方法がないので下山が考えどころなのだが、みなぽさんがお隣の往古川真砂谷を下ってはと提案してきたので採用。

お盆に位牌谷を遡行して死人不還谷覗き、鬼丸谷下降するという何やら地獄巡りめいた企画となった。(予備日消化のアフターも前鬼川)


8/14(木)
9:30 岩井谷出合-12:10 三平滝直下-14:00 三平滝高巻き終了点-16:15 梅ノ木谷出合C1

毎度の如く、早朝に夜行バスで京都に到着して紀伊半島へ向かう。
高速を走っている間も雨が降り続き不安が募るが、予報では9時頃には尾鷲付近の雨雲も抜けるはず。

GPVの詳細予報でも39時間後まではクリティカルな雨雲は通過しないので、増水さえ酷くなければおそらく大丈夫であろう。数日前までの台風を含めた周辺山域の保水状況次第といったところなので、エスケープを意識しながら入渓することとする。


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9:30に銚子川発電所から入渓。吊り橋手前の右岸側から沢床に下りる。
水量は体感でそこまで多くなく、これなら行けるかもしれない。
C1の10m滝は左岸から巻いて懸垂下降。続く直瀑20m滝は滝下まで行って左壁の登攀で突破を試みるが、序盤であまり無理をしたくないので途中で諦めて少し戻り、右岸側から高巻き。

沢が左手に折れるとすぐに斜滝20mが現れ、右岸のガリーをお助け紐を出しながら登る。河原が現れしばしの休息かと思いきや、前方にはするどく切れ込んだ谷が見える。CS滝6mを挟まりながらゴリゴリ登ると巡視道の吊り橋に出る。序盤の見所である三平滝(2段60m)はこの巡視道を辿ると直下までいくことができる。


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しかし三平滝は大きな釜の向こうで左手に直角に折れており、水飛沫を浴びながら堰堤を登らないと全体像が見えない。しかしそこへ行くまでの足場もかなり間引きされており(過去に打った杭が切断されている)、際どいヘツリを要求されるので、そこまで無理はしたくないということもあり、滝の下部の水飛沫だけ見て引き返す。

三平滝の巻きは、巡視道をひたすら戻ってモノレール伝いに階段を上り、巡視道が尾根を乗り越す部分から右手の尾根に入る。終始マーキングがあるので迷うことはないが、楽をしようとトラバースに逃げるとルートに戻れなくなるので注意。
マーキング終了点からガレを下り、高巻き開始から約一時間半で沢床に復帰。


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ここからは比較的平易な遡行となるが、途中で大きな釜を持った15m滝が行く手をふさぐ。しかし右岸をしばらく登ると踏み跡があるので、そこを辿ると懸垂なしで沢床に戻れる。本日は梅ノ木谷までの予定なので、後は写真撮影にいそしみながらまったり遡行。途中で何度か泳ぎを交えながら、16:15に梅ノ木谷出合に到着。


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天気も持っているので、ツェルトを張り焚火を楽しむ。パートナーは明日の朝用にプリンを仕込んでくれていた。寒くもなく快適な夜を過ごすが、途中で雨が降ってきたので、念の為朝まで増水を警戒。しかし結局水位はほとんど変わらず、このエリアの保水力の高さを感じる。


8/15(金)
6:15 C1-8:15 連瀑帯終了点-11:20 十字峡-12:20 岩井谷大滝上-15:15 30m大滝上-16:13 真砂谷源頭C2

6:15に出発。ここからは怒涛の連瀑帯に突入する。最初の6mと15mは右岸巻き。続く18mは中々の美瀑。直登は困難そうなので左岸から巻くが、結構立っているので一部ロープを使用。


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その後の10mも末広がりで美しいがやはり直登は厳しいので同時に左岸から巻く。高巻きに使った小尾根はどんどん沢から離れていくので、一度懸垂下降でガレに降りて続く18m滝に近づく。ここは左岸のガリーの登攀でワンポイントシビアだが、残置ピトンがあるのでアブミを使ってクリアできる。最後の5mも巻くとようやく沢床に戻ることができ一息つける。

その後の滝やゴルジュを抜けると15m滝が現れるが、左手ガリーから簡単に登れる。しかし続く8mCSへの取り付きに行くには瀑流を浴びなければならず、雨具を来てトライするものの流心で吹っ飛ばされそうなので、15m滝の手前まで戻って一気に大高巻き。


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ここから渓相は少し変わり泳ぎを多用するゴルジュ帯となる。やや平水より多めな感じだが、晴れ間の覗く絶好の水泳日和なので、ロープを引いてガンガン泳ぐ。

2段4m滝でゴルジュ帯は終わり、しばし山仕事にも使われていたであろう大きな平坦地の隣接する癒し系の沢中を歩いて11:20に十字峡着。


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ここを右手に進むと、やがて上流側にとんでもなく大きな水の流れが見えてくる。大滝との出会いは、全景が見える直前に上空の木々の合間から白い流れが垣間見える瞬間が最も興奮する。ここが、銚子川の核心部とも言うべき岩井谷大滝である。

場所が場所なら御神体として崇められていたであろう立派な大滝で、しばしその場に立ちとどまってその威容を堪能する。


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岩井谷大滝の巻きは右岸のルンぜを詰め、途中から岩と樹林の混じった急な斜面をゴリゴリ登る。一部安全の為にロープも出す。落ち口で右手に斜上すると上部の5m滝上にドンピシャで出たので、すぐに沢床に戻れた。

この後も滝が続くが、一度の沢登りで覚えていられる滝の数を越え始めるので記憶も曖昧…。2段12m滝はロープを出して直登したが、それ以外は巻きだったのであまり印象に残っていない。


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その後、CS×2の先に6m滝がかかるミニゴルジュが登場。普通は巻く様だが頑張って泳いで取り付いてみる。CS×2はツッパリを使って普通に越えられるが、最後の6m滝が水の勢いが強いのとスタンスがないのとで手強い。

しかしここでゴルジュ入口に戻って高巻くのも癪なので、水飛沫を浴びながら渾身のクライミング。ツルツルなので支点を取る余地もないが、いい感じに身体が温まっていたので、集中して登りきることができた。パートナーにはお助け紐を垂らして登ってきてもらう。


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ここからは再び連瀑帯。少しいやらしい高巻きもあるので疲労の溜まりつつある身体で集中力を切らさない様に注意して登る。

やがて満を持してラストの大滝となる3段30mが登場。ここは直登できそうなのでロープの準備をしていたら、パートナーがチャレンジしてみたいと言うので頑張ってもらうことに。


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大滝下部は比較的登りやすいが、水量がありそれなりに緊張感を強いられる。大滝上部はさらに斜度が立ってくるが、支点を取りたいところに折れた木が横たわっており厄介。一旦中間地点に戻り、左手のブッシュでピッチを切る。


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ここからは代わりに登らせてもらい、爽快なシャワークライミングで落ち口に辿りついた。大滝の上からは熊野灘が一望でき、岩井谷遡行の達成感と相まって最高の気分。


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この後は癒し系の源頭で早々に泊まりたくなるが、なるべく明日の行程に余裕を持たすために、稜線を越えて真砂谷方面へ向かうこととする。途中、何匹ものシカに出会う。特にいやらしい藪漕ぎもなく、すんなり真砂谷の源頭に入って適当な場所で幕営。この日もパートナーは杏仁豆腐を仕込んでくれた。


8/16(土)
5:40 C2-7:00 2段55m滝下-9:20 八町滝下-12:10 最初の20m滝-14:30 林道-15:45 熊野街道

昨日に引き続いて夜は雨に降られたが、源頭なので問題なし。4:00起きで5:40に出発。
この辺は以前に山仕事の人々が泊まっていたであろう跡が散見される。
小滝をいくつか下ると、いきなり足元がスッパリ切れ、真砂谷上流の2段55m大滝の落ち口に立っていることを知る。


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遠くには昨日の終盤と同様、熊野灘が朝霞の中に浮かんでいて幻想的。
右岸を少しトラバースして、懸垂下降三ピッチで大滝下に下り立つ。下から見ると中々見事な大滝である。

続く20m滝も懸垂で下り、その後のゴルジュ状連瀑帯は右岸から巻き下る。
するとまたしても足元がスッパリ切れ落ちる。ここは昨日登った岩井谷大滝をも越える高さを誇る八町滝(100m)の落ち口。流れに吸い込まれるような恐ろしさを感じる。

右岸側にトラバースして小尾根を越え、懸垂下降2~3ピッチで裏側のスラブ状ルンぜに降り立つ。下から見ても見事な大滝。この滝はかなり辛めだが人工を交えて登攀もできるとのこと。


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大滝を巻き下って一心地付いたが、ここからは怒涛の大岩ゴーロ帯。とても手におえないので、右岸の疎林帯も上手く使いながら下降する。どうやら過去に八町滝上で山抜けしたことがあるらしい。後ろを振り返るとかなり上部に先ほど下ったばかりの八町滝の姿、そして左手には奥坊主の岩峰が鋭く聳え立っているのが見える。


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沢は途中で一旦伏流になるが、すぐに復活する。沢中を見渡すと明らかに流れがないところに紺碧の淵が佇んでおり、近寄ってみると湧き水が出ているのが確認できる。水もいままでのものより冷たく、試しに飲んでみると非常に美味しい。

今まで遡行した台高の沢は、途中で大滝が出てくるのと同時に、一気に水量が増えて水温が下がっている様に感じたが、中流付近からの湧き水が結構出ているのであろう。


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ゴーロ帯に辟易してきたところ、ようやく真砂谷最後の悪場であるゴルジュ帯に到着。ここはゴルジュの中に20m滝が二つ連なり、迂闊に懸垂下降で下りると進退窮まりかねないので、左岸から高巻き。予想通り踏み跡っぽいものもあるので、それを辿れば比較的安全にゴルジュ帯をパスできる。


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後はその下の20m滝を懸垂で下り終えれば安全地帯。雰囲気のある河原を歩いて、出合から林道へ上がる。ここは電波が通らないので、林道終点まで歩き。ここでタクシー会社に連絡すると、到着まで一時間ぐらいかかると言われたので、熊野街道まで一時間以上歩く。

その後はタクシーで銚子川発電所の車を回収するだけだが、ひどく荒れた林道なので、タクシーの運転手は困惑していた。こんなところに突っ込ませて申し訳ない…。

車回収後は尾鷲に出て焼肉で打ち上げ。予備日を一日残す形となったので、翌日は前鬼川での遡行を楽しんで帰京した。

<感想>
岩井谷は台高随一の険谷ということであったが、山仕事の人々が遥か昔から往来していることもあり、巻き道も比較的明瞭で安心感がある。保水力も高いので増水の心配も少なく、トポを参照しながらだと結構すんなり遡行できるという印象である。真砂谷も坊主尾根を挟んで隣接しているので同様の感想。

しかし、岩井谷大滝や八町滝を始めとして、三日間で数々の大滝が現れ、どちらも遡行する者に強烈な印象を残してくれる名渓である。今シーズンの台高通いも一区切り付いた感じなので、そろそろ他のエリアにも足を運んでみたい。