雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

光と不動の大滝巡り

ルート:銚子川光谷右俣~不動谷下降(2014/7/5-6)
メンバー:みなぽ

紀伊の沢の伝道師みなぽによる布教により始まった紀伊の沢通い。
昨年は大峰 立合川台高 東ノ川を遡行し、会越方面に目の向きがちな関東サワヤから一転、沢の殿堂紀伊半島のポテンシャルを知ってしまい、気付いたら週末に往復1000kmを越える紀伊の沢通いを始めていた。

 

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今年も五月後半から台高・大杉谷(こちらは沢沿いのハイク)、立間戸谷、絵馬小屋谷と徐々に紀伊の沢へ入り始める。7月に入り、そろそろガッツリ系をやりたいと思っていたところ、予定していた週末が生憎の雨予報。
これじゃ目的の沢は厳しいかなと思っていたら、最近大滝登攀デビューしたパートナーが「雨で増水するなら大滝登攀すればいいよね」と仰るので、比較的簡単な大滝登攀が楽しめる銚子川光谷に転進決定。
しかし大滝登攀だろうが増水したらヤバい。

7/5(土)
10:45 林道終点ゲート-11:25 光谷右俣入渓-11:50 行合-14:50 30m滝-15:50 光滝下-18:00 奥ノ二俣C1

夜行バスで6:30頃に京都駅に到着。そこからレンタカーで高速を南下して銚子川流域へ向かう。
銚子川沿いの林道は予想以上に荒れたダートで、定期的に道中の落石を道端に寄せながら進んでいく。発電所を越えてしばらく進むと、不動谷の出合でゲートにぶつかるので、ここに車を止めて出発準備。
まずは林道を40分ほど歩くが、道中現れる岩のトンネルが異界への旅路を予感させる。林道後半は土砂崩れによる崩壊が酷く、道というよりは崩壊地のトラバース。

 

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入渓点で再度身支度を整えてから光谷右俣を遡行開始。
序盤は癒し系のナメや、絵馬小屋谷を彷彿とさせる行合のゴルジュが現れる。

 

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3段40mの滝が現れると、いよいよ核心部に突入した感。
直登は厳しいので右岸巻きに入るが、岩壁帯が予想以上に高くてかなり巻き上げられてしまった。
ルンゼのトラバースポイントに当たりを付けて懸垂下降し、その後もゴリゴリ藪の中を進みながら形の整った30m滝の下へ巻き降りる。
シーズン序盤で高巻きの感が鈍っているのと、今回は練習も兼ねて極力ロープを出す方針なのとで、かなり時間が掛かってしまった。

 

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30m滝を右岸から巻き、10m滝も右岸のルンゼから攀じ登ると、ついにお目当ての光滝多段多状80mが登場。
やはり雨で増水しており比較的登りやすい大滝とは言え、迫力十分。上段はガスの中に隠れており、虚無の中から飛瀑が現れる様は中々幻想的である。
下段は容易なので右岸を歩いて登る。中段の後半から徐々に水流に近づくことになるが、平水時はフリーでも問題なさそう。

 

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但し、今回は水量が多くてスリップの危険も増しているので、ここは間を取ってパートナーに練習も兼ねてリードしてもらう。大滝のリードは初めてということもあり、ランナーの取り方に四苦八苦していた様で、結局ハーケン一枚打っただけでリード終了。あまり意味ないけど致し方なし。
ここから落ち口までのラストピッチもそこまで難しくないが、増水した流芯を突破することになるのでリードでしっかりとロープを引く。
無事に大滝を登って落ち口のテラスで一息入れようと思ったら、頭上に継続して3段55m滝が続いており、気分的にはまだまだ大滝の半分といったところ。

 

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こちらの滝もロープ二ピッチで落ち口まで登る。流芯は増水していやらしそうだったので草付きを登るが、草付きになれていないパートナーは少しずり落ちてしまった様子。沢特有の地形は実地での練習あるのみ。
滝上はミニゴルジュになっているので、側壁を登ってから巻き、懸垂一回でようやく沢床に復帰。

 

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時間もそろそろ怪しくなってきたので、急ぎ足で奥ノ二俣へ向かう。黄昏時のゴルジュ突破も中々乙なもの。

奥ノ左俣へ少し入ったところで右岸の高台に幕場適地を発見したのでテントを張る。
ちなみにこの日は昼過ぎから雨が降っており、大滝登攀中も絶賛降水中。夜半はさらに雨脚が強まって、テント内も結構濡れてしまった。


7/6(日)
7:30 C1-9:00 木組峠 10:00-11:00 不動谷-12:50 清五郎滝(第三下)-13:30 清五郎滝(第二上)-15:50 ゲート

6:00起きでラーメンを作り、雨の中出発準備。
濡れた沢服を着るのがかなりの苦痛である。

わずかなハイクアップで台高の主稜線に到着し、ここから稜線上を南下して木組峠へ向かう。
木組峠からは主稜線から東の尾根へ派生する登山道を進むことになるが、どうせ藪道だろうと思ってトラバースで取り付こうと思ったら危うく光谷方面へ降りつつあったので、急遽登り返してリカバリー。戻ってみると藪道かと思いきや立派な登山道が続いており、最初に立派過ぎて逆に目的のルートだと気付かなかったパターン。思い込みって恐い。

この道は尾根上を東へ進んだ後、地図上では消失してしまうが、現地では南の沢へ下降する様にネット状のものが張られており、それを辿っていけば沢筋に降り立つ。この沢筋を少し下降すると、お目当ての不動谷に到着する。

 

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不動谷は右岸に林道が走っているのでエスケープも可能だが、比較的時間に余裕があるので沢沿いに下降開始。
随所に広いナメや見栄えの良い小滝が現れ、爽快な降渓が楽しめる。

 

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そして不動谷のクライマックスはなんといっても清五郎滝。記録によると清五郎滝は第一~第四まである様で、降渓する場合はまずは第四を右岸から懸垂ニピッチ、第三を左岸から巻き降りる。

 

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第三滝は形も素晴らしく、滝の下で飛沫を浴びながらその威容に酔いしれる。
そして続く第二滝はそれを遥かに上回る100m以上もの大滝。遊歩道沿いに観察することができるが、巨大過ぎて一度にその全容を拝むことはできない。
慎重に下降ポイントを探り、まずは懸垂一ピッチ目。後半の岩壁も一気にパスしようと思ったら危うくロープが足りなくなるところだった。ロープの伸びを利用して、なんとか無事に回収。大滝の屈曲に合わせて支点をずらしながら、合計懸垂下降四ピッチで大滝下の沢床へ降りる。

 

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しかし、懸垂終了点から増水した流れを渡るのが難しそうだったので、五メートル程登り返してギリギリまで下流へトラバースし、もう一度懸垂下降して、ようやく安全地帯に降り立った。
たかが懸垂下降、されど懸垂下降。藪や絶壁で進行方向が確認できない場合は、目視できる範囲で可能な限りルートを読み、トップはバックアップ懸垂で慎重に降りながら、場合によっては登り返しでリカバリーという、懸垂下降の基本をみっちり復習できた。

ここからは巨岩と小滝が続くが、左岸に大滝観察用の踏み跡があるので、そちらを辿れば無事に車を駐車したゲートに到着。この日も下山するまで終始雨で、沢も結構増水していた様子。おかげ様で、計五時間あまりの豪快な降渓を存分に満喫できた。

 

今シーズンもレスキュー訓練、渡渉訓練とひと通りのカリキュラムが終わり、足慣らしもぼちぼち終わったので、そろそろガッツリ系の山行にトライしたいところ。