雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

黒部湖スキー横断

ルート:北アルプス 扇沢~スバリ岳~大スバリ沢~黒部湖~御山谷~一ノ越~雷鳥平~立山川~馬場島(2013/3/15-17)

メンバー:M平さん、ハッチ

 

3/15(金)

4:00日向山ゲートー5:30扇沢ー8:30マヤクボ出合ー10:20スバリ岳コルー11:20スバリ岳ー12:20下降点ー13:10滑降開始ー13:45大滝上(巻き)ー15:00滑降開始ー15:20黒部ダム湖畔(幕場)

 

前夜七倉荘泊。タクシーで日向山ゲートまで行き、一時間半の林道歩き。

ここ数日まとまった雪が降っておらず、晴天の日が多かったので、斜面はカリカリ。早々にクトーを付けて歩き出す。針ノ木雪渓には大規模なデブリが横たわっており、その脇を急いで抜ける。

 

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マヤクボ出合から先は場所によっては雪が溜まっている。

急斜面でジグを切っていると、表層のスラブが切れて落ちたので、一部アイゼンに切り替えて直登。

 

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スバリ岳のコルからは四ヶ月前には暗緑色の湖面を湛えていた黒部湖が、純白に染まっている。(記録

徒渉ルートを双眼鏡で観察してみると、ところどころヒビが入っているが、歩いて渡るのに問題はなさそう。

この時点で駄目そうなら針ノ木峠方面に切り替える予定だったが、凍結具合もOKそうなので、スバリ岳に向かって歩き出す。

 

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11:20スバリ岳到着。山頂からは眼前に純白の立山剱岳の姿。後ろを振り返ると、富士山もぽっかりと浮かんでいる。

場合よっては山頂から大スバリ沢に滑り込めるとのことだが、凍結した急斜面で下部は非常に細いルンゼなので、安全な場所まで板を担いで降りる。上部はクラストした急斜面が続き、バックステップでの緊張した下りが続く。

 

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安全そうな場所まで降りても、稜線直下は強風で雪が飛ばされた為か、盛大にハイマツが露出している。仕方がないので滑れるところまで降りて滑降開始。上部の雪は悪かったが、中腹部はまずまずの雪質。立山と黒部湖を眼前に見ながらの滑降は最高だった。

 

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沢の合流点で迫力の大スバリ沢奥壁を見送ると、ポイントとなる大滝に到着。ここは降りられないので、スキーヤーズレフトのルンゼを登って、尾根向こうのルンゼに降りる。下降はグサグサの雪が付いた急斜面なので、持参していた30mロープで懸垂下降×3回。幅広のルンゼを滑って再び沢の本流に合流すると、すぐに黒部ダム湖畔に到着。

なるべく黒部湖は早朝に渡りたいため、本日はここで幕。ロケーション最高、流水完備の最高の幕場であった。

 

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3/16(土)

5:20幕場ー6:00御山谷出合6:30ー11:00一ノ越(⇔雄山)ー12:00滑降開始ー12:30幕場

 

ヘッデンがいらなくなるぐらいの時間帯に黒部湖横断開始。念のため、ロープでアンザイレンして歩き出す。本当に歩けるか最初は半信半疑だが、乗ってみると非常に安定しており、特に不安は無かった。

ここから一ノ越まで御山谷の1200mアップ。下部はなかなか標高が上がらず、気分的にも長い登り。

 

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11:00一ノ越到着。予定では雄山山頂から山崎カールを滑る予定であったが、上部はカリカリの斜面、しかも岩が露出していそうだったので、100m程登ったところで一ノ越に戻る。稜線直下はやはり固かったが、中腹から雷鳥平までは雪も溜まっており、誰もいない室堂の景色を楽しみながら、最高の滑降を楽しんだ。

 

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雷鳥平に到着した時点でまだ12:30なので、このまま立山川を滑れば本日中に下山も可能だったが、午後から気圧の谷の通過で天候が荒れるのと、翌日の晴れが確約されているのとで、本日はここに幕営決定。

 

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3/17(日)

5:30幕場ー6:20稜線ー7:30滑降開始ー9:20馬場島10:00ー11:00伊折

 

朝、テントから出ると満点の星空。雄大な立山の脇には、さそり座に釣り下げられた浄土山の姿。日の出とともに、日本海が菖蒲色に染め上げられていく。

 

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本日の登りはわずか200m。立山川上部で念のため雪質を確認すると、クラスト斜面の上に15cm程の新雪。特にスラブ化もしていないので、スラフマネジメントしながらであれば滑降も特に問題なさそう。後は足が痛くなるまでひたすら滑降を楽しむ。

 

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東大谷出合あたりから斜度も急激に落ち、いたるところで両斜面からのデブリに遭遇する。時期が遅ければ沢筋も割れてくるが、今回は特に板を外す事無く林道合流点まで抜ける事ができた。最後一度だけ板を脱いで徒渉し、馬場島に到着。県警の方に挨拶して、ヤマタンを返却する。

 

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馬場島近くまで除雪が入っていたので、伊折ゲートまでは40分程の林道歩き。振り返ると鋭いスカイラインを描く剱岳の山肌が春の日差しに輝いていた。

予定では湯川谷方面に下山した三浦さんパーティと打ち上げする予定だったが、連絡が取れないので、我々だけで富山のぼてやんで打ち上げ。富山駅に戻ると超軽量化装備がデポされていたので、あちらも予定通り下山されていた様だ。(記録

帰京は深夜バスなのでそれまでの時間、金沢の後輩の車に載せてもらい金沢観光。

兼六園を始め、金沢市街のスポットを案内してもらい、アフターも充実であった。

 

今回の山行は自分がB会に所属する直前に見せてもらったルートと同じである。(記録

当時はスキーを使えば一泊二日(場合によってはワンデイ) で黒部横断ができるという事実が衝撃的で、是非とも自分の足でやってみたいと思っていた。今回ようやくそのチャンスが訪れ、天候にも恵まれ会心の山行を完遂することができた。

黒部横断といってもルートは発想しだいで様々に広がるし、横断の条件を外しても、スキーの機動力を駆使すれば、独創的なラインで色々と楽しむ事ができる。まだまだ満足するのは早そうだ。

 

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