雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

滑川奥三ノ沢~三ノ沢下降

ルート:滑川奥三ノ沢~三ノ沢下降(2017/8/5-6)


夏合宿のプレで再び中アの沢へ。前回の細尾沢と場所的にも近いので嫌な予感はしていたが、案の定ボロボロ渓であった。足並みが揃っている&ルーファイミスがなければ初日にかなり高度を上げられるが、大人数のパーティだと幕場がないので急いでもあまり意味がない。三ノ沢下降は登山大系を読むと推奨の様に書いているが、沢慣れたパーティでないとハマる可能性があるので、その辺を踏まえての判断が重要。


8/5(土)
7:15 駐車場-10:15 奥三ノ沢出合-12:30 雄滝・雌滝-17:00 滝上C1

北股沢の大堰堤に車を停めて出発。林道を少し下ると敬神ノ滝小屋に出るので、そのまま滑川右岸の林道を奥まで進み、突き当りの堰堤から沢床に降りる。


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ここからひたすら河原歩き。厳つい宝剣岳の稜線が見えると、やがて奥三ノ沢出合に到着する。出合からいきなりF1の大滝が聳えており威圧的。ロープを出して取付いてみるが、岩が脆くてこぶし大の岩がボロボロ取れる。登攀的には難しくないのだが、いつ掴んでいる岩が取れるか分からないのが怖い。凹角を詰めた後は左のリッジに移り、大滝の上に出る。


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すぐにF2 50m滝が出てくるが、ここは登攀に苦労しそうなので、大人しく左岸から高巻き。懸垂なしで大滝上に出られる。F3を越えると瓦礫が堆積した崩壊地に出る。この辺の岩はやはり脆いのだろう。


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続いてF4のナメが現れ、その上に奥三ノ沢の核心である雄滝・雌滝が現れる。ここはKくんに二つの滝の中間にある凹角を登ってもらうが、腕力頼りのモンキークライムがつらそう。また、その後の凹角から抜けるところが細かく、しばらく苦戦した後、諦めモードだったのでサポートに行ってショルダーで上がってもらう。凹角の上はちょっとしたスペースになっており、アイスクライマーが落としたと思われるテルモスが転がっている。


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ここからは藪を漕いで雄滝の上に出ればよいのだが、中央の露岩帯から行ったらスムーズかなと思って右手にザイルを伸ばしたのが大失敗。リッジを上がるところまでは良かったが、どんどん右手に導かれて、気付いた時にはボロボロの露岩帯を斜上トラバースする羽目に。ド安定と思った机サイズの岩が、触った瞬間に滑り落ちていくので非常に恐ろしい。


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細かいスタンスを拾いながらなんとか樹林帯に出てピッチを切るが、後続も非常に苦戦しており、だいぶメンタルが削られた様子。樹林帯もまだ安心できる場所ではなく、逆方向へのトラバースで戻ることもできないので、そのままロープを出してもう一ピッチ直上。登り切って尾根を乗っ越したところからようやくロープなしで雄滝の上流側に下降できる様になる。


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沢底に出てから少し遡行するが、幕営できそうな場所がなさそうなので、結局高巻き終了点まで戻り、一ヵ所完璧なスペースを見つけて幕営とする。巻きのルーファイミスで結構な時間をロスしたが、結局この沢で四人が安定して寝られる場所はここしかなかった様なので、訓練山行の時間の使い方としては正解であった。

いつもの様に薪を集めて焚火をおこすが、ようやく火が付いたと思ったタイミングで無情の夕立。諦めてタープに潜り込み、早々に就寝。


8/6(日)
4:35 C1-8:35 三ノ沢岳 9:00-三ノ沢下降-12:30 二俣-14:30 滑川出合

初日の遅れを取り戻すべく早立ち。F7 25mは左壁、F8 20mは左岸から巻く。高巻きの途中から見える下界の雲海が美しい。


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その上の連爆帯は途中で右岸の巻きに入り、懸垂なしで沢底に戻る。しばしゴルジュが続き、どん詰まりにF12 3段12mが登場。ここは中段で水流を跨ぎ、快適な岩登りで落ち口に抜ける。


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F13は左壁をKくんリードで登り、上部の二俣に出る。この辺の渓相はとても素晴らしく、抜けるような青空と相まって最高に気持ちの良い遡行。

しかしそこに突如として現れる県警のヘリ。何度も我々の上空を飛び回っては、たまにホバリングしてこちらを伺っている様に見えるので、どうしたものかと思ったら宝剣岳の方に近づいていった。後で調べてみると、どうやら宝剣沢で遭難者が見つかったとのことで搬送に来ていたらしい。

城塞の様に聳えるF16 20m滝はロープを出して取り付くが、下部のボロい滝と違って非常に硬く、安心感の違いに思わず笑みが零れる。この滝の上で沢は突如として水涸れになり、後は淡々と詰めるのみ。


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幕場から約4時間で三ノ沢岳に到着。さっきまでは晴れていたが、山頂に着くころには雲が湧き、視界もなくなってしまった。通常はここから7時間ほどかけて木曽駒経由で登山道を辿って下山するが、今回は訓練山行でもあるので、お隣の三ノ沢を下降することとする。


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三ノ沢の源頭はかなりの急傾斜だが、なんとかクライムダウンで降りられる。所々懸垂した方がよいかなと思うような場所でも、近づいてみると大体何とかなる。しかし天気は崩れる一方で、ガスのゴルジュ帯に踏み込んで行くのはなんだか気味が悪い。


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ゴルジュ内部は案の定10~20mが幾つか続くので、さすがにここはロープを出して懸垂下降。使えそうな灌木の類は一切ないので、場合によってはハーケン残置かと思ったが、なんとかシュリンゲを通せそうな岩の隙間を見つけたので、残置スリングで下降×2回。


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二俣に出てからは大岩が転がる開けた河原となり、たまに現れる崩壊地を横目に淡々と進んでいく。急に段差が現れたかとおもうと大滝の上で、どうやらここが五連の滝の様子。残置ハーケン二枚で懸垂下降するが、途中で一本抜けたらしいので気を付けたい…。


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この滝以外の四つの滝は小ぶりで、フリーで降りられる。全体的に単調な三ノ沢の中で、ピンポイントで綺麗な場所であった。

後は再び単調な河原を下り、滑川に合流。行きと同じ道を一時間程歩くと堰堤に到着するので、ここから林道に上がり、駐車場へと戻る。荷物をまとめていると急に雨が振り出したので、急いで車に乗り込む。今シーズンの夏山はいまいちすっきりしないが、そんな中でもしっかり訓練山行が積むことができて良かった。


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正沢川 細尾沢

ルート:正沢川 細尾沢(2017/7/22-23)


夏合宿のプレの悪天転進で中アの初級沢へ。普通に遡行すると何でもない沢ですが、細尾大滝の登攀が良いアクセントになりました。但しとっても脆いので、賢明な方はセオリー通り巻きましょう。


7/22(土)
7:35 駐車場-9:35 細尾沢出合-10:55 大滝 13:00-14:00 C1


木曽駒高原スキー場の登山口に車を止めて入山。登山道をしばし歩いて急登に差し掛かる手前の渡渉地点から入渓する。
渓相はゴーロ主体でどちらかというと沢歩き。細尾沢出合までは二時間のアプローチ言っても差し支えない。


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途中で真新しい足跡と共に黒い動物の姿が見えたので一瞬ドキッとさせられたが、岩屋でくつろぐカモシカだった。一分ほどお互いを見つめあってから分かれる。


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正沢川本谷を左に見送って細尾沢に入ると、登って楽しい小滝が現れる様になる。雪渓がでてきたと思ったら奥に40m細尾沢大滝の姿。巻く一択の滝なので高巻こうとするが、Nさんがちょっと登ってみるとのことなので正気かなと思いながらロープを出す。


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滝の下半分はそれほど難しくないのでサクサク登っていくが、突破できそうにない落ち口の少し下で水飛沫を浴びながらくの字型に曲がって右上し始めたタイミングで動きが止まる。落石がひっきりなしに落ちてきて非常に脆そう。どうやら岩が安定しているか不明なので、入念にチェックしながら登っているらしい。
下手すると落石でロープが切れかねないし、支点もプアそうなので結構ヤバい。ジリジリ進んで上部の細い立ち木にランニングを取りようやくひと心地だが、その後も手こずるトラバースがある様で中々大変そうだった。


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ロープがFIXされて二番手はKくんが登るが相変わらず落石がひどい。自分はラストで大滝に取りつくと思った以上に岩が尖っており痛い。素手だったので軽く流血。先行二人が苦戦していた右上ポイントは山側の岩がヌメヌメでホールドも一切なく、谷側の飛び出した岩に足をのせて回り込む必要があるが、この岩がまたボロッと根元から崩れ落ちそうで怖い。恐る恐る足をのせて回り込み、ようやく上部のブッシュを掴む。その後のトラバースを慎重にこなし、ようやく終了点へ。
大滝を登ったという充実感はあるが、正直脆すぎてヤバかった…。


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滝上からは細尾沢のハイライトともいうべき美しいナメ滝が連続する。一時間ほど歩くと雪渓の横に幕場適地があったので、本日はここまでとする。


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さっそく焚火の準備をするが、いざ着火しようというタイミングで雨が降り出し、テントに避難。意気消沈してご飯の準備をしていると、雨がやんで急に天気が回復してきたので、薪に着火する。上等なお酒に厚切りベーコンをはじめとした豪華なおつまみの数々で、充実の焚火ライフ。


7/23(日)
5:10 C1-7:35 木曽駒ヶ岳山頂-10:00 七合目避難小屋-11:30 駐車場


夜半に一時的に強く雨が降り、朝起きると隣の雪渓が崩壊していた。昨日よりも天気が悪く、稜線付近はガスガス。標高が高くて寒いので、朝焚火で身体を温めてから行動開始。
本日も雪渓なども交えながら楽しい滝登りだが、一時間ほど歩くとツメの様相。どんどん直登していくと、一時的な藪漕ぎを経て、ガレ主体の山肌登りとなる。


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右側の稜線にでるのが一番安全な様だが、そのまま行けそうなのでガレ斜面を直上して尾根筋へ。そのままガスの中を登って行くと登山道に出て、一分ほどで大勢の登山客でにぎわう木曽駒山頂に到着。先週の赤石沢北沢~赤石岳に引き続き、沢からアルプスの主峰登頂シリーズだったが、先週と同じく視界ゼロ…。
寒いので記念写真を撮ってすぐに下山開始。

福島Bコースは避難小屋までのトラバースが長いが、そこから先の下りは早い。山頂から三時間半ほどの行動で登山口に到着。麓の国民宿舎で汗を流して帰京した。


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赤石沢北沢

ルート:赤石沢北沢(2017/7/15-17)
メンバー:MK氏、ハッチ


7/15(土)
11:40 赤石沢入渓点-15:30 取水堰堤-16:00 北沢出合C1


7時前に畑薙に到着したがすでに長蛇の列で、椹島行きのバスはまさかの三巡目。
三時間以上、駐車場でだらだらと過ごす。ようやくバスに乗り込んだと思いきや、混雑により途中下車はNGとのことで一旦椹島まで行き、赤石沢入渓点まで歩いて戻る。結局入渓したのは12時ちょっと前。


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赤石沢は取水していないとのことなので、以前来た時より水量が多い。前回は水線を突破した淵も巻きが必要だったりと多少時間がかかる。しかし、これが本来の赤石沢の水量であり、これぐらい手応えがある方が遡行しがいがある。


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14時頃に先行パーティに出会い、さらにその少し先で下降してきた釣り師パーティに出会う。三連休だけあって、入渓者も多い。取水堰堤を過ぎるとすぐに北沢出合。ここに幕場適地があるので、本日は短いが行動終了。ボリュームたっぷりの牛丼で明日の長時間行動に備える。


7/16(日)
4:50 C1-14:50 登山道-16:20 赤石岳避難小屋 C2


赤石沢の南沢(本流)は中々標高が上がらないが、北沢はどんどん標高を上げていく。最初は巨岩のゴーロ帯で特に難しいところはない。やがて前方に二段二条の滝が現れ、本格的な沢登りが始まる。


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この滝の上段はややハング気味だが、なんとか登れそうなので取りついてみる。ハーケンを効かせてハング部分を乗り越えると後はスムーズに滝上まで抜けられる。


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この後のスラブ滝は左手からトラバース気味に越え、続く小滝群も快適に登って行く。
滝が左手に曲がるところで、2段20mほどの滝が出てくるので一度取付いてみるが、岩が脆くて危険なので引き返す。左岸の草付きから巻きに入ると獣道で滝の上部に抜けられる。


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続く直瀑もなんとか抜けられそうに見えるが、最後が水流が強くて難しいので、また出戻って右岸から巻く。


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この先にいよいよ40m大滝を始まりとするゴルジュ帯が出現する。ここは全く手が付けられないので、左岸のルンゼから巻きに入る。


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再び沢底に戻るといよいよ雪渓が現れる。この雪渓は滝の落ち口で途切れており、その先は屈曲したゴルジュ状地形で伺いしれない。先に進めるか分からないが、雪渓から飛び降りて滝の左手のスラブ帯に取りつく。


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滝は登れず、側壁はズルズル系なので中々手強い。大きく巻き上げらながらもなんとかトラバースラインがつながる。


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その先を覗いてみるとまだまだ滝は続いているが、登れそうな滝だったので一安心。ここでダメなら雪渓まで戻って高巻きのやり直しとなるので、二時間以上のロスが発生するところだった。


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滝の右壁をハーケンを効かして快適に登り、続く小滝をフリーで直登すると、最後に再び登れない滝。ここは右手のルンゼをロープをだして登るが、またしてもズルズル系でいやらしい。


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巻き上がると獣道があるのでそのまま進んでいく。手強かったゴルジュ帯は抜けられたが、今度は行く手に大きな雪渓が広がっている。


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雪渓はひたすら歩くだけだが、ピンソールや軽アイゼンなどの装備を用意していなかったので滑る。一度ゴルジュ帯で雪渓が切れるので左岸から巻き、再び長大な雪渓歩き。滑って消耗するので、後半は雪と土のボーダーラインを選んで登る。


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雪渓は赤石岳の山頂まで繋がっているが、最後は急登且ついつ崩落するか分からない薄い雪渓なので、登山道側に抜けて行動終了。


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ちょうどこのタイミングで雨が降ってきてどうするか悩んだが、折角なので赤石岳山頂を目指すことにする。一時間半程度のハイクアップで赤石岳避難小屋へ。赤石岳の稜線は強風でかなり消耗させられたが、小屋に入って一安心。

避難小屋にはフレンドリーな山屋が多く、ただ座っているだけで美味しそうなご飯を色々頂いてしまった。小屋の管理人さんは名物主人らしく、喋りも面白い。赤石沢北沢なんて面白くないと言うのに引っかかったが、遡行したことはないらしい…。


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7/17(月)
5:20 C2-8:40 椹島


この日も朝からガス&強風。九時頃には晴れるらしいが、残念ながらそこまで待つ余裕はない。再び展望ゼロの赤石岳に登頂し、後はひたすら下るのみ。約三時間程度の行動で椹島に到着すると、案の定快晴。赤石の山頂では絶景が広がっているに違いない。
バスの待ち時間を利用してシャワーを浴び、お昼前に駐車場に到着。長い林道をひた走って昨年と同様、さわやかで打ち上げ。帰りの高速はひどい渋滞だったので、御殿場から道志道経由で圏央道に入り、結局夕方近くに帰京した。


<まとめ>
赤石沢の本流は言うまでもなくクラシックな名ルートだが、北沢は山岳会的な人種が好むルートで、本流よりも沢登りをやった感は強い。今回は情報もほとんど仕入れない状態で行ったが、中盤のゴルジュ帯は突っ込んでみないと抜けられるのか分からず、結局ギリギリのところで抜けられるという展開で、沢登りの駆け引きが存分に楽しめた。やはり記録に頼らず、頭を使って色々と駆け引きをやって登る山が一番面白い。