雪中松柏 愈青々

徒然なる山の備忘録 

安倍川 コンヤ沢ホーキ沢

ルート:安倍川 コンヤ沢ホーキ沢(2016/9/17)
メンバー:DSKさん、NSさん


SWは南会津方面を計画していたが、天気が悪いので南アの安倍奥のコンヤ沢ホーキ沢に転進。コンヤ沢の本谷はゴルジュが面白いらしいが上部が山抜けで埋まっているらしい。一方、支流のホーキ沢は連瀑系で、オツルミズや果無の八木尾谷を彷彿とさせる連瀑に続く連瀑。本来は一泊二日の予定だったが、とある理由により山中で泊まるのが憚られたので、日帰りで下山とした。


9/17(土)
7:00 孫佐島-8:00 ホーキ沢出合-11:15 F6上林道-17:00 登山道-19:00 梅ヶ島

孫佐島に車を止めて安倍川にかかる橋を渡り、コンヤ沢に入渓。
すぐに巻くのが厳しそうな堰堤が幾つか出てくるがご丁寧にロープがFIXされている。ゴルジュ状地形に入るとすぐに、右手からホーキ沢のF1が流れ落ちてくるのが見える。


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F1の15m滝は直登するしかなさそうだが、ヌメり系でラバーは少々つらい。
ここはウールフェルトのNSさんがリードで登りなんとかクリア。


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F2~3は一見して巻きそうになるが、この沢は滝の直登を嫌って巻いていると巻きに終始してしまい意味がないというS山トポ(関東周辺の沢)の煽りに刺激され、とりあえずトライしてみる。F2は水中の細かいスタンスを拾いながら登る。F3は泳ぎで被り気味の右壁に取り付いてクリア。


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F4~5はさすがに厳しそうなので、左岸から巻いて懸垂下降で沢底に戻る。
F6の三段25m滝は人工物の様な造形で面白いが、これも明らかに登れないので右岸から巻くと一旦林道にでる。
まだF40あるうちの1/7程度しか滝を越えていないが、ここまででも奥多摩や丹沢の簡単な沢を一本やったぐらいの充実感はある。


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F7から先はしばし快適な小滝が続き、ガシガシ直登して進んでいく。
やがて眼前にF21の35m大滝が現れるが、どうやらここからF26までは大滝が続き、この沢の核心となっている様だ。


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まずは前衛の4mを直登してその先のラインを探るが、もともと厳しそうな上に、増水気味でとても取り付ける気がしない。
仕方がないので、大滝右のリッジ状を1P登って落ち口横にトラバース。


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ここで沢底に戻ってもよかったのだが、続く大滝も越えられそうにないので、そのまま左岸巻きを続けて、最終的にF26の20m大滝手前に出る。
F26は頑張れば登れそうだが、時間が押しているのでここもおとなしく左岸巻き。核心部と言っても巻きに終始したので、やや印象が薄かったのが悔やまれる。


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ここからは再び快適な小滝が続き、二ヵ所ほど巻きとなったが、全体的に気持ちよく登らせてくれる。最後の滝はガッツリシャワークライミングとなり、テンションが上がったところで、一気に渓相は穏やかになる。


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そのまま沢筋を詰めると稜線までそれなりの距離があるが、途中から登山道に向かって近道できるのでありがたい。打ち切りポイントで一端装備を解除してみると、結構ヒルにやられており、首筋、手首、腹回り、足首と満遍なく噛まれた跡がある。この沢のヒルは上半身までアグレッシブに攻めてくるので油断ならない。

ここで幕営するのはちょっと辛いので、ヘッデン下山にはなるが、本日中に下山することとする。


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登山道に出てからはそのまま梅ヶ島方面に下山するが、踏み跡が薄く少々心配になる。途中で地形図の登山道から離れていったので、一度地形図の登山道通りに進み直してみるが、沢筋に入るところで大崩壊しており通行不能。どうやらこの崩壊により、登山道を付け直していた様だ。

梅ヶ島に下山する頃にはすっかり暗くなっていたが、河原では焚火を楽しむ家族連れもおり、温かい下界のぬくもりを感じる。
ここから孫ヶ島までは歩くと一時間ぐらいかかるので、自分が空身で走って回収に行ったが、そこら中を鹿が徘徊していたので、このヒル被害もさもありなんという感じ。

少々長めの一日だったが、元々予定していた計画との差を考えると調度良い感じの計画だった。この辺の沢は渋いが、まだまだ面白そうなところもあるのでまた訪れたい。


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赤谷川本谷

ルート:赤谷川本谷(2016/9/10-11)
メンバー:Minapoさん


学生の頃、沢登りを始めてすぐに先輩からヤバいところと教えられた赤谷川本谷のドウドウセン。今までなんとなく行く機会に恵まれなかったが、今回Minapo氏の谷川デビューを兼ねて、トライすることにした。
結果的には水量が多く、ドウドウセン核心のG滝を越えた後は攻められなかったが、楽で合理的なドウドウセン見物ルートをトレースすることができた。
また、マワットのセンや裏越のセンの登攀だけでも十分楽しめ、フィナーレの癒し渓も含めて、噂通り完成度の高い名渓だった。


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9/10(土)
4:50 川古温泉-7:00 渡渉地点(入渓)-7:50 マワットのセン 8:15-9:25 裏越のセン 11:00-12:00 ドウドウセン 15:30-17:30 C1


前日に関西から来たパートナーをピックアップして川古温泉へ。
初日は長時間行動なので朝も早いが、最初の林道歩きでパートナーは半分寝ながら歩いていた。
途中で仮眠を取りつつ約二時間で渡渉地点へ。ここから赤谷川本谷の遡行となる。


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すぐにマワット下のセンが現れるがどうにも水量が多い。とりあえず左壁にフリーで取りつくが結構ヌメる。中段のテラスの先でワンポイントいやらしいトラバースがあるので、念の為ロープを出して1Pで落ち口へ。照りつける朝日がまぶしい。


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続くマワットのセンは右壁から取りつく。バンドをトラバースしてから落ち口に向かって斜上し、最後はフリクションのよく効くスラブを登って抜ける。


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ここからしばし巨岩帯で沢中を進むと結構時間がかかりそうだが、左を巻き気味に進んでいくと容易に突破できた。
裏越のセンはただでさえ威圧的な景観だが、今日は大水量でその迫力に拍車がかかっている。


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右壁バンドから取りつくラインは流心を渡渉できるか怪しかったが、ダメなら引き返すということで、とりあえず取りついてみる。
草付きバンドをトラバースの後、少しクライムダウンして下段の落ち口へ。水量は多いが、なんとか渡渉はできそうだ。


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カムでしっかり支点を取り、脈打つヒョングリの下でいざ渡渉!水飛沫の壁を越え、対岸の岩に飛び移る。素晴らしい爽快感で思わず笑みがこぼれる。パートナーも虹のアーチを潜り抜けて無事に渡渉成功。
ここから上はできれば水線に近いラインを取りたかったが、とても取りつける状態ではなかったので、右岸の藪の中を登って落ち口へ抜ける。


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いくつか小滝を越えると一見登れなさそうな滝が出てくるが、近づいてみると右壁が登れそう。ここはドウドウセンの前衛滝らしく、滝上を左に曲がるといよいよドウドウセンのG滝45mがその姿を現す。


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G滝は右壁を斜上気味に登り、3Pで上部の藪へと入る。緊張感のある草付きだが、最近入ったパーティの踏み後らしきものがあり、ルーファイは容易だった。


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F滝上で一旦沢底に近づいてみるが、大水量のトイ状廊下はとても近づける雰囲気ではないので、おとなしく左岸を巻き進む。この後、沢を渡渉して右岸に入り、岬経由で進むのがセオリーらしいが、巻くのであればそのまま左岸を進めばよさそうな地形に見える。増水により沢中は進めそうになく、渡渉する意味も特に見いだせないので、そのまま左岸の藪を前進。


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どこかで降りれそうなところがないかチェックしながら進んでいくと、なんと前方に平穏な河原が見える。ドウドウセン…こんなにあっさり終わってしまうなんて…。せめて少しでも登っておきたいと思い、枝尾根を降りて有名なB滝上の出口のない釜のしきりに降り立つ。
A滝左壁のリッジを登ってあっという間にドウドウセン終了。増水の為、中盤の滝に取りつけず無念だったが、左岸巻きオンリーで容易に越せることが分かったのはせめてもの成果か。


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ドウドウセン上は最高の幕場適地があるが、時間も早いので先に進む。
悪めの滝を一つ右岸の草付きから越えると、フラットな河原が延々と続く。


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薪を拾い集めながら、簡単なゴルジュを幾つか越え、万太郎山から入る右岸の枝沢の付近で幕営とする。


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9/11(日)
8:30 C1-9:50 国境稜線-15:15 川古温泉


二日目は下山するだけなので、ゆっくり寝て遅めのスタート。
下山のことを考えると万太郎山方面の枝沢に入った方が楽だが、癒しの渓相をまったりと楽しむのもまた良し。


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最後は少し藪を漕いで、オジカ沢ノ頭の下で国境稜線に抜ける。
ここからは国境稜線を万太郎山の先まで進み、やや荒れた登山道を下って入渓した渡渉点へ。


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来るときも思ったが、周囲の山肌には赤谷川本谷の比ではない程の悪渓が犇めいており、これらの沢は登られているのか少し気になった。
後はゆっくりと林道を歩いて川古温泉へと下山。猿ヶ京温泉で汗を流して帰京。


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やや消化不良感はあったが、パートナーも谷川エリアの魅力を知ってくれた様で一安心。また機会があれば訪れたい。


大蕎麦谷沢右俣

ルート:会越 常浪川 大蕎麦谷沢右俣(2016/9/3-4)
メンバー:DSKさん、NSさん


毎年一度は通いたい御神楽岳周辺の沢、昨年のム沢も中々楽しめたので、今年は大蕎麦谷沢へ行ってきました。


9/3(土)
6:50 ゲート-9:30 巨岩帯-11:30 二俣手前-14:10 大滝下-16:30 C1


御神楽岳の室谷側登山口に回収用の自転車をデポしてから、大蕎麦谷沢側の橋を渡ってすぐのゲート前に駐車。
以前はもう少し奥まで林道を入れていた様だが、現在は工事中とのこと。
ソノ又谷沢との分岐から沢に降り立ち、遡行を開始する。


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地形図上では毛虫マークだらけなのでどんな渓相かと思っていたが、両岸は聳え立っているものの、沢幅は広くて標高差もないので、下流部で問題となるようなところはほとんどない。
会越らしい景観を眺めて、ああ会越に来たんだなあと噛みしめながら進んでいく。


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途中の巨岩帯はルーファイが難しいが、岩の隙間を適当に潜りながら登って行くと意外とすんなり抜けられた。
その後はわずかな河原歩きの後、ゴルジュ帯が断続し、たまに現れる小滝をシャワークライミングで突破しながら楽しく進んでいく。


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やがて前方に御神楽らしい巨大な岩壁が見え始め、二股下部の連爆帯に到着。
前衛の4m滝からして少しいやらしいが、まずは偵察と空身で泳いで取りつき登ってみる。その上は右に折れてすぐに8m程の直瀑。


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登った前衛滝の落ち口横の右壁はなんとか登れそうだったが、その上にはさらに手ごわそうな滝が控えている気配なので、ここはおとなしく戻って巻くこととする。


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巻きは左岸の藪を少し登って左手にトラバースし、ひとまず少し開けた尾根上のテラスへ。ここから傾斜のきつい藪のリッジをDSKさんリードで1P。後半は左手にトラバースして尾根状地形に乗ったところでピッチを切る。ここは調度二股の上の様で、沢床へとブッシュも続いていたのでクライムダウンで下降。


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この後もすぐに登れない滝が現れるので、再び左岸巻き。NSさんリードでやや急なスラブを1P登って上部の藪に入る。ここも左手上部の尾根を乗っ越してから、懸垂下降なしで沢底に降りられた。


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後ろを振り返ると浸食により形成された二俣周辺の劣悪な景観が広がっており、御神楽好きとしては心がときめく。


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二俣より上部は登って楽しい滝が適度に続き、やがて2段50mの大滝が現れる。
ここは左岸のルンゼから巻かれることが多い様だが、最近右岸から登られていたので、より滝に近いこちらのラインをチョイス。


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傾斜のきつい藪尾根を2Pで登って顕著なバンド帯に乗り、後はテラスを歩いて滝の落ち口へ。
初日はこの大滝を過ぎてから、次のゴルジュ帯に入る直前で行動終了とした。


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9/4(日)
5:20 C1-7:40 80m大滝下-9:20 大滝上-12:00 雨乞峰-13:45 室谷登山口


朝食は焚火で蕎麦。肉厚の鴨肉が美味。


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沢はスラブ状の小滝が断続するが、ラバーのフリクションがよく効くので快適。
途中の登れない滝は右岸の藪からDSKさんリードで落ち口へ1P。


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前方を見上げると威圧的な岩峰群、周囲を見回すと広大なスラブ群という絶景で、徐々に近づきつつあるクライマックスに気持ちが昂ってくる。


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そして現れる迫力の80m大滝。そこまで傾斜がきつい訳ではないが、いかんせんヌメりがひどくてラバーソールで流心を渡れる気がしない。


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まずは自分がリードで大滝の右壁から1P。最初は簡単だが後半は微妙なブッシュ帯の登りを強いられる。

次はNSさんリードで50mロープを目一杯伸ばし、滝上部の流心を渡って落ち口の右岸側へと抜ける。高度感のある中、確実なルーファイで登られるのはさすがの一言。最初はどれだけ苦戦するものかと思ったが、ルーファイが良かったおかげで時間もそこまで掛からず、快適な登攀を楽しめた。
この大滝の落ち口は、岩峰の基部とほぼ同じ高さで、この辺で門をくぐる形となる。


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大滝を越えた後も滝は続き、少し大きいヌメり気味の滝はDSKさんリードで1P。たわし片手にヌメリを落としながら登り、くの字型のラインを描く。下から見ると厳しそうな滝だったが、良い感じにホールドが続いており実際は快適だった。


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後は平凡な渓相かと思いきや、これまた以上にヌメる小滝が現れる。NSさんが空身で左の細い草を掴みながら越えるものの、後続はアッセンダーだけではなかなか登れず苦戦。ムーブ的にはここが一番難しかった。


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途中で大休止を挟みつつ、そのまま本流筋を詰めて12時頃にようやく登山道到着。多少藪を漕ぐことになったが、最後は開放的な草原もあり、良いフィナーレだった。


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全体的にそのまま下山する雰囲気だったので、一人だけ水源の雨乞峰を往復。以前、ここから少し下った登山道で見た大蕎麦谷沢の景観に惹かれて、いつか訪れたいと思っていたので中々感慨深い。
後は快適な登山道を下り、1時間半ほどで室谷の登山口に下山。


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本来はここから自転車で車を回収する予定だったが、調度居合わせたソロ登山者の方の御好意で、車のデポ地点まで送って頂けることになった。地元の方だったので新潟の山談義で盛り上がる。

このお陰で全体的に予定を前倒しでき、御神楽温泉で汗を流して、東京で解散したのが大体20時前後。
天気にも人にも恵まれ、素晴らしい山行でした。NSさん、DSKさん、どうもありがとうございました。